Episode26:敗北と事の終わり
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が深々と突き刺さっていた。地の白い一校のブレザーに赤い痕となって血が広がる。
痛みに集中が乱され、消失も不発に終わった。口内までせり上がってきた血を口端から垂らしながら、隼人は懸命に龍の体を蹴り飛ばした。短剣が引き抜かれ、血が溢れ出る。
「ぐっ…」
なんとか龍を引き剥がすことに成功したが、隼人は明らかに限界だった。
自身の抱えるトラウマとマルチタスクの過剰使用による精神的疲労、これまでの戦闘での肉体的疲労。そして、トドメに腹部の傷と少なくない出血。
「チィ…」
対する龍にも、限界がきていた。怪我や疲労ではない。もう一人の自分が体の主導権を取り返そうとしてきているのだ。このままでは、結局誰一人殺せずに終わってしまう。
焦りを覚えて、龍は次で終わりにしようと膝をついた隼人を見据えた。
「終わりだ」
出血のせいか、意識が朦朧として動けない隼人に、宣言通り龍が繰り出したのは確実に死に至るであろう一撃。
幾人もの人間を殺してきた刃を前に、隼人はどこか達観した面持ちだった。
(俺が今まで殺してきた人達も、こんな光景を最期に死んだのか……)
どんな気持ちで死んだのだろう?最期に思ったのはなんなのだろう?それとも、恐怖でなにも考えられなかったか?
そう考えて、死を覚悟した時。隼人の意識は勝手に途切れた。
「………っ!!」
ぞわり、と言いようのない悪寒が龍の背中を撫でた。思わず、隼人に振り下ろしていた刀を止めてしまう。だが、その直感は間違いではなかった。
パァン!という破裂音が、至る所で響き出した。
「なに…っ!?」
隼人から距離をとることすら忘れて、周囲を見渡した龍は、驚きに言葉を失った。
「ァ…ぁぁぁあああああッ!」
隼人が叫び声を上げる。その度に破裂音は激しくなり、そして、周囲のものが空間の歪に消えていく。
明らかに魔法が暴走していると、龍は冷静に分析した。この場に留まっていては危険だと判断し、撤退しようと踵を返す。その時、パタリと叫び声が止み、まるで糸の切れた人形のように隼人が倒れた。
「一体、なんだったというのだ……いや、そんなことよりも」
危険だ、と、龍は隼人をそう評価した。このような存在を放置していれば、明らかに祖国への脅威となる。ならば、自分のやるべきことは一つ。
「死ね、九十九隼人」
刀を隼人へと振り下ろす。これで終わりだと、意識のない隼人へ言うようにゆっくりと。
だが、
「させると思うか?」
「っ!」
腹にズンと来るような重い声が、龍に届く。見れば、己の刀は透明ななにかに防がれていた。
「ふん!」
「ぐぉっ!?」
刹那、龍はなにかに突き飛ばされた。なんとか受け身をとって、すぐに新
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