Episode26:敗北と事の終わり
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思考とは即ち、同時に複数の思考を頭の中ですることだ。隼人が魔法を発動する場合、『座標』に一つ、『規模』に一つ、『種類』に一つ、そして『サイオンの書き換え』に一つずつマルチタスクを使用する。
つまり、隼人は一つの魔法を使用するのに合計四つ以上の思考を同時にしていることになる。
そして、先程同時使用した魔法は三つ。合計、12個の思考を同時にして、かつ元々精神的にダメージを負っていた隼人が膝を折るのは仕方のないことだった。
「…後は、達也たちに任せれば平気、かな?」
氷剣に囚われた人間の末路は、凍死か衰弱死か、とにかく生きている可能性はほぼないだろう。どうにかして、内部から氷を壊さない限りは。
そう考えて、隼人は嫌な予感を覚えた。萎える足に喝を入れて、半ば無理矢理に立ち上がりながら、氷剣を見る。
ピシリ、と常であれば芸術作品にすら見える氷剣に罅が入った。
「…振動か……」
よく見てみれば、氷剣が小刻みに振動していた。
氷剣の弱点、それは魔法師であれば簡単に使用可能な振動系単一魔法で氷を砕かれてしまうことだった。
パキン、と遂に氷剣は砕け散った。パラパラと落ちる氷の粒を払って、龍は笑みを浮かべた。
妖しく光る刃に、隼人は苦い顔をする。
「ふむ…氷の中に囚われるとは。中々味わえない経験をしたな」
「そのまま一生体験してもらっててもよかったんだけどね」
軽口を叩くが、隼人は今立っているのが精一杯の現状だ。正直、このまま戦闘を続ければいずれ追い込まれることは目に見えている。
だが、逃げるというわけにもいかないだろう。いや、それ以前に、目の前で獲物を見つけた虎のように目を光らせる男から、逃げられるなどという愚かな考えは起こりもしなかった。
「やるしかない、なッ!」
ならば隼人の取る策は短期決戦のみ。最初から手加減なく全力でぶつかり、自分が力尽きる前に目の前の男を倒す。
☆★☆★
風切り音を鳴らして振り抜かれる白刃を、砂鉄を操作して防ぐ。もはや何度目かも分からなくなってきたこの交錯。砂鉄を操る青髪の少年は、限界を迎えていた。
「ぐっ…!」
龍の鋭い一閃が、砂鉄の防御よりも早く隼人の右肩を浅くだが切り裂いた。痛みに呻き声を漏らしつつ、間に合わなかった防御用の砂鉄を攻撃用にチェンジして龍に向かわせる。
「ふんっ!」
「く…!」
だが、どこか上の空の状態の隼人の魔法は精彩を欠いており、津波のごとくのしかかる砂鉄は龍に簡単に回避され、逆に切っ先での一撃をもらうことになった。
「消えろ…!」
頬を走る白刃を睨み付け、隼人は消失を発動。刀ごと龍の腕をも消し去ろうとして、
「っ!?」
腹部に激痛。見れば、隼人の腹に短剣
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