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魔法科高校の神童生
Episode26:敗北と事の終わり
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巻き付け動きを止めると、手前にいた男が銃を構える前に側頭部に膝を叩き込み昏倒させる。そのまま動かなくなった男の頭を踏み台に、隼人は驚きで動けなくなったもう一人の男の顔面に回し蹴りを放った。
しなる右足をモロに喰らった男は、勢いそのまま壁に頭をぶつけて地面に倒れこんだ。頭部からの出血量から見て、ほとんど死んだだろう。

だがそんな事はどうでもいいと笑みを浮かべる。下っ端でも悪党は悪党。殺してもいい人間……
そこまで思考して、隼人は思い切り壁を殴った。

「…違う。俺は、アイツらとは…!」

また、自分は笑っていた。人を殺して。奴らと同じことをして、なぜ、自分は笑えるのか。

「…ッくそ!」

だが、現実は隼人に考える時間を与えてはくれない。隼人の眼に、急に活性化したサイオンの輝きが鮮明に写る。

「龍舜秦…!」

間違いなく、彼のサイオン光だ。そしてそれは、達也たちへと向かおうとしていた。

「させるか」

今ここで龍に達也の邪魔をさせる訳にはいかないと、隼人は動きを鈍らせる思考を一旦廃棄して一直線に龍の元へ向かった。



☆★☆★




硝煙と僅かな血の匂いを頼りに、龍舜秦は駆ける。自身の中の人格と入れ替わって、かなりの時間が経つ。そろそろあの馬鹿娘が痺れを切らして体の主導権を奪いにくるだろう。その前に、何人か殺しておきたかった。

大亜連合特殊工作部隊に所属する龍舜秦は、軍人であるにも関わらず自他共に認める殺人狂である。いや、軍人で、戦争に駆り出されることが多かったからこそ、殺人狂にまで龍舜秦という男を昇華させることができたのだろう。
噂でしかないが、大亜連合は思想教育という名の洗脳によって殺人狂を生み出しているという。軍事拡張が激しい今の大亜連合において、積極的に戦争に参加してくれる存在が多い方がいいのだろう。だがそれは、余りにも人道から逸れた行為である。勿論、諸外国からの非難の声は大きい。大亜連合以外の国で連携し、早急に滅ぼすべしという意見も出たほどである。

だが、『噂』は『噂』でしかなく、洗脳を施しているという証拠を掴めなかった諸外国は次第に大亜連合討滅を諦めて行った。

だが、その噂は真実である。殺人狂育成計画……それは確かに大亜連合の中で行われ、そしてこの『龍舜秦』が最初の成功体であった。いや、この場合、『龍舜華』に洗脳が成功し、『龍舜秦』という人格が生まれたというべきか。

元からあった龍舜華の人格に、新たに生まれた殺人狂の人格。それが、龍舜秦である。

故に、龍舜秦の意識がこの世界に存在している時間は短い。猶予はない。取り敢えず、己の欲求を満たすために走り抜ける。誰でもいいから、殺す。
手に持った刀型のCADが、血濡れ色に煌めいた、刹那---

「っ!
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