第一物語・後半-日来独立編-
第七十三章 終息へ向かう時《1》
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傷を負わせ、戦えなくするのは彼にとって戦いという幸せを奪うということだ。
だから玄次郎は普段は自身の力を制御し、“これくらい”という感覚で力を振るう。
「毎日毎日、力制御してて苛々してたんだ。けどよお、テメエ相手なら本気出してもいいよなあ――!!」
玄次郎の背後に足場が幾つも表示される。
足場によって宙に出来た道の先端に玄次郎は立ち、利き手の右腕に力を込める。
朱の甲殻が力を入れる度に黒く、名に入っている玄と化していった。
揺らめく陽炎が現れ、体温の上昇を表した。
右腕全体が黒に染まる時、竜神が目の前までに進行していた。絶好の攻撃機会だ。
馬鹿正直に突っ込んで来た竜神に黒い一撃を放った。
●
それは玄次郎が跳躍し、視線の高さを竜神と同じぐらいにした頃。
立体的に移動をしていた一人の人族が、戦闘艦の甲板上に膝を着いている央信の元へと向かった。
重力を感じさせないような機動。
障害物があるならば飛び越えるか避けるか、地を駆けていると思ったら急に宙へ跳び、加速系術を用いて大跳躍を行ってみせた。
更に驚くのはその速さだ。
加速系術を使っているとはいえ、立体的な機動を取っているのに減速せず、逆に加速し続けていた。
視線が央信を確かに捕らえた時、竜神を目の前にした玄次郎が打撃を放った。
「――ンのやろ! 後ろに長がいるだろうが!」
注意の行き届かない先輩だなと思いつつ、玄次郎の拳が竜神へ当たるまでの数秒間。
天桜覇王会副隊長である日々日・王政の顔の横に、灯火-トモシビ-と映る映画面|《モニター》が表示された。
それは王政が扱う創作系術であり、名の如く灯すように王政の足元に映画面が現れ、照した。
能力の発動は二パターンある。
一つは灯火-トモシビ-を直接身体に対し使うか。もう一つは現れた灯火-トモシビ-に触れるかだ。
灯火-トモシビ-の能力自体は単純なものだ。
灯しの火に触れた箇所の身体能力強化。
ただこれだけだ。
端から見れば単なる身体強化に過ぎないが、他と違う点は一度発動したら更に同箇所に重ね掛け出来る。最大の特徴としては強化の上限が無いということだ。
基本的な身体強化は対象者が扱い切れない程の力を対象者には与えない。あくまでも扱える範囲内での身体強化に過ぎない。
かえって王政の灯火-トモシビ-には身体能力の対象者が王政のみで、能力の発動に条件はあるものの身体の強化に上限が設定されていない。
これは自身の限界以上の力を扱えるということであり、人族である王政にとっては強力な系術に感じられる。
創ったはいいものの、いまだ使い慣れていないが上手く扱えるようになれば、生身で騎神を相手に出来ると理論上答えが出されている。
「重ね掛け五十!」
言う王政は
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