間違っていない選択などない、あり得ない。
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定生命体に登録するか否か悩んでいるところに再びエリザは精一杯の勇気を振り絞ったような甲高い声を上げ冥星の鼓膜をぶち破った。
「きょ、今日 お、お部屋でお待ちしてますから!!!」
「が……ぎ……耳がぁ……」
顔を真っ赤に染め上げ、長ーい金髪をバァッサァと翻し、逃げるように階段を駆け上った――かと思えばお茶碗をお盆に乗せ、キッチンで綺麗に洗った後――あ、あとで洗うので水に浸けておいてくださいね! いや、私がやっておくから存分に逃げなさいと微笑む明子にお礼を言い、ダッシュで部屋に逃げ込むエリザ。海星はぐぅかわいいと一言つぶやく。
「……はぁ、騒がしいわね……」
「あっはっはっは! エリザってば本当に可愛いねぇ! おい聞いてんのかクソガキ」
残念ながら冥星は耳がイカレてしまっているため誰の声も届かなかった。頭をバンバン叩く明子を無視し、こんな大胆な攻撃を仕掛けてきたエリザに憎悪を燃やしながら冥星は無我夢中でご飯を貪る。
「絶対許さんぞ……ぶつぶつ」
「ふ……誰がなんというと、お前はバカだよ冥星……」
「ふざけるな、俺はどう考えても天才的な頭脳を持った天才的神童だろ」
「いや、ただの屑でしょ」
「黙れ……小学校三年生までおねしょをしていた愚かなる妹」
ガキンとフォークとフォークが擦れあう音が夕食を飾る。片方は先ほどのエリザに負けず劣らず顔を真っ赤にした妹、片方は器用に空いた右手でスパゲッティを啜る兄。そして行儀の悪い二人に拳骨を下す明子。今日も秋坂家の食卓は賑やかです。
「な、なんで、し、しって……」
「なんでかって? 当たり前だろ、そんなことは」
「な、なんでよ」
「俺がお前の偉大なる兄で、どんなに汚らわしい血を引いていても、お前は俺の妹だからだ」
「…………バカじゃん」
その言葉で一瞬のうちに冷めた瞳に戻った海星はエリザに継ぎ、食卓を退場した。相変わらず小食で食べず嫌いだ。そんな妹のことが、冥星は大嫌いだ。
いつから兄妹としていがみ合っていたのか。そんなことはもう忘れてしまった。何をしてしまったのか、あるいは何をされてしまったのか。考えることすらどうでもいいほどに、冥星は妹を己の視野から外した。
ただ、間違いなく妹は自分のことが大好きだった。そう言っていたことが……確かあった。
「冥星」
「あぁ? いいかげん飯を食わせろ」
「今回の件は――許す」
「何のことだ?」
「とぼけるなよ冥星」
「…………あのじじい」
「もちろんお前がエリザを助けるために悪党を演じたこともだ」
「は……? なんだそりゃ? おい……」
「相手の子はmyuを発動したらしいな? それを止めるには瞳を狙うしかなかった」
あの時、まさか相手が逆上して能力を使うとは思っていなかった
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