暁 〜小説投稿サイト〜
Myu 日常編
間違っていない選択などない、あり得ない。
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
たわけではないと?」
「その通りだ」
「君の持ち物にあったこの手紙は彼女たちが書いたものなのだね?」
「その通りだ」
「傷の治らないエリザさんに言い知れぬ悪意が降りかかれば大きな負担になる。それを防ぎたかった、そうなのだね?」
「その通りだ」
「さて、先生方――私は冥星君の行動を決して許さない。それを前提で話を進めるが、もう一度聞きたい。彼は本当に収容所へ行くべきなのか?」

 収容所――それは家畜以下の者たちが繋がれる牢獄。ミュータントが罪を犯した場合、司法により裁かれることはない。どんな罪であれこの収容所と呼ばれるどこにあるかもわからない監獄に一生涯叩き込まれ永久に労働を課せられる。死ぬまで、永遠に。
 ミュータントたちの墓場――それが収容所なのだ。
「校長! 既に冥星君は吉野君に被害を加えています! 彼は今でも病院で意識不明の重体なのですよ!? それに加え今回の事件――彼は危険です! 収容所へ入れるべきです!」
「いや……噂だとあそこにはとんでもないミュータントが収容されていると聞く。もしそんな奴と秋坂冥星が接触でもしたら」
「くだらない! たかが噂如きで……あのジュリアナ・ローズでさえもうこの世に存在しないのだ! ミュータントなど恐れるに足らんわ!」

 罪には罰を。ミュータントには死を。それが世界の掟だ。ミュータントの死は、収容所を意味する。つまり、これは裁判であり冥星は極刑か否かということだ。
 どうでもいい。冥星はどんなところでも生きていける自信があった。悪辣な環境でも、毒ガスが吹き荒れる大地でも、死の雨が降る高原でも……ただ、飯がまずいということを除けば我慢の仕様がある。まずい飯を除けば。あと働きたくもない。
 空腹で思考が低下している冥星だが、収容所には僅かばかり興味があった。
 それでもいい。『存在』する可能性があるとすれば、間違いなく――あの場所だ。
 見つけ出して、それから――。

「――最低ですあなたは」

 …………面倒な物を拾ってしまった自分に、後悔した。たかが小娘一人のために大義を成すためのチャンスを捨てようというのか?
 歯を食いしばる。選択権などない。そのための命、そのための生――ならば。
 冥星は決断した。それは何者にも邪魔をすることのできない強い意志。揺るぎなき信念。
 全ては、自分が働かなくても暮らしていける幸せな世界のために、この命燃やし続ける。


「彼を収容所に行かせるわけにはいかない」
「校長! いい加減に!」
「行かせるぐらいなら今、私がこの手で彼を殺す」
「――な」


 本気なのかそうでないのか。それはどうでもいい。肝心なのは、学校の長たる者が生徒を殺すと発言したことだ。こんなことが発覚すれば学園の存続する危うくなってしまう。すべての教
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ