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Myu 日常編
間違っていない選択などない、あり得ない。
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くびくしている小僧だぞ」
「いいや違う。事実、君は二年前クラス崩壊寸前だったあのクラスを、まぁなんというか……崩壊させてしまった……」
「あれは吉野が悪い。俺は悪くない、以上。腹が減ったさっさと帰らせてくれ」

 再び冥星に拳を振り上げた男性教師を老齢の男が手で止める。先ほどから冥星に対して真髄に話していた男だ。
 しばらくすると冥星は拘束具から解放された。視界には長机が冥星を囲うように並べられ、全ての――いや一人を除きすべての教師たちが冥星に厳しい目を向けていた。

「確か……校長?」
「一応ね。覚えていてくれて光栄だよ、冥星君」
「ステーキを食わせてくれたからな」

 唯一、冥星を暖かな目で見ていたのは学校の長だった。白髪混じりの髪をオールバックにきっちりと固め、スーツには皺一つ見当たらない。疲れたような優しげな眼光が妙に印象的だ。

「おお! あの時のことをまだ覚えているのかい?」
「あのステーキは俺が食べた中で最高の食材だからな。今でも忘れられない……あの口の中を広がる肉汁……」
「いや、そのことじゃなくて――――まぁいいか。君は食べ物に夢中だったからね」
「人とミュータントが幸せに暮らせる世界」
「…………やはり君は……いや、あの時の答えを、聞かせてくれるかね」
「できるさ。今がそうだ。ミュータントを支配し、人類が繁栄する世界。食べ物も寝る場所もある。何が悪い?」
「支配がある。ミュータントは自由を求めることができない。おかしいとは思わないのかい?」
「思わない。強い者が勝つ。弱い者が負ける。食べ物が豊富な方が生き、枯渇すれば死ぬ。それだけのことだろう」
「変わらないのだね。君は……本当に眩しいくらいに」

 一旦言葉を切り、校長は目を閉じた。まるで旧友のように繰り広げられる言葉のやりとりに他の教師たちは驚きを隠せない。
 学校一の問題児であるあの秋坂冥星が……なぜこの学校のトップと関わりがあるのか?
 ざわつく部屋に、今度は荘厳な声で校長は冥星に決定を下した。

「秋坂冥星、君のやったことは決して許されることではない。どんな者であれ残虐な行為する者を私は決して許さない」
「別に許してほしいなんて思ってない。帰らせろ、それだけだ」
「貴様ぁ冥星! いい加減に――――」
「やめたまえ。一度目は体罰として認めたが、次に彼を攻撃した場合、君にはそれ相応の処置が待っているぞ」

 バツが悪そうにすごすごと下がっていくジャージ姿の男教師――――おそらく体育教師だと思われるが残念ながら冥星は腹が減っているので思考が停止している。もはや誰が何を言っているのかもわからない。

「だが、君はエリザ・サーベラスを彼女たちから助けた、違うかね?」
「その通りだ」
「では君は彼女たちをただ無意味に害し
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