オーバーロード編
キカイダーコラボSP編
第38話 呉島光実の良心
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――REBOOTボタンを押してくれ。
ジローは今、確かにそう言った。
『ジロー……でもそれはっ』
リブート、再起動、自分が自分でなくなる恐怖。僅かに話しただけでも伝わった。それをジローは自ら望んでいるというのか。光実が弱いばかりに。
「大丈夫だ」
『ジロー……?』
「ぼくは、ぼくにしかならない」
彼の瞳は眩しいほどに輝いていた。己の言に嘘などないと訴えていた。
『――分かった。信じさせて。人は、自分は自分のままでいられるって』
龍玄が足を引きずって立ち上がると、ジローは背中を向けた。龍玄はその背にあるREBOOTボタンを回し、押した。
がくん、とジローの頭が下を向いた。
ジローの額から放たれた光が円状に広がった。
「スイッチ・オン」
光が晴れたそこに立っていたのは、右半身が青、左半身が赤に染まった、機械人間。良心を持つロボット――
『それこそが伝説のヒーロー……キカイダーの真の姿かっ』
『キカイダー……』
キュイン。キカイダーがハカイダーを見据えた。
『ここからは、機械的に行こうか』
――キカイダーの圧倒的な強さに、さすがのハカイダー(正確にはハカイダーの人格である戦極凌馬)も分が悪いと悟ってか逃走を選んだ。
光実は変身を解き、ジローも人間態に戻った。
(あれがユグドラシルぐるみの実験なのか、戦極凌馬個人の暴走なのか、後で確認して、上手いこと言い訳しとかないと。いやむしろ、これは弱みとして使えるか? 多少無理を通す予定だから、今回の件で言うことを聞かせられないか試して――)
ブツブツと思考を整理する光実の横、ジローは一点を見るようにして動かない。
「ジロー?」
キュイン。ジローの首がこちらへ向いた。
「きみは誰だ?」
――リブート、再起動。PCなどにおけるそれは、データの消失に繋がることがある。
決断の対価は、彼自身だった。
「――、思い出したんだね」
「ぼくには大事な使命がある。もうすぐ始まる。巨大な敵が動き出す。ぼくは絶対に守り抜かなきゃいけない」
胸が痛かった。まるで光実の知るジローのように、目の前の彼は答えたから。
「行くところがあるんだ。大切な人がぼくを待ってる」
「羨ましいよ――」
待ってくれる人がいて――喉まで出かけた言葉を呑み込んだ。待ってくれる人を自ら切り捨てた光実に、それを口にする権利はない。
去りゆくジローに、光実もまた背を向けた。そしてまっすぐ前を見据え、歩き出した。
(僕にもREBOOTボタン、あったらよかったのに――なんてね)
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