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星の輝き
第35局
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の肩を冴木は軽くはたく。先輩棋士たちの中でも冴木は年が若く、和谷との中も一番よかった。
「考え込んでも仕方ないって。まだ1ヶ月あるんだ。ほら、打とうぜ」
「はい、冴木さん、お願いします」

−そうだ、俺だって本戦に進んだんだ。チャンスはある。



 院生トップの伊角慎一郎は九星会の先輩棋士である桜野プロに指導碁を打ってもらっていた。桜野は美人で長い髪がトレードマークの女性棋士。九星会は囲碁専門の塾で、桜野とはそこで知り合って以来の仲だった。

「この下辺はちょっと甘かったですか?」
「そうね。それで白は手を抜いて、先に右辺にいけたものね」
「ちょっと、手をかけすぎでしたか…」
「でも、こんなところじゃないかな」
「そうですね、ありがとうございました」

 対局後の検討が終わり、伊角は碁石を片付ける。

「ふう、やっぱり慎ちゃんの相手はきついわねー。指導碁といってもほとんど本気よ、私。慎ちゃん、今年こそ合格しないとね」
「そうですね、オレも今年こそはと思っています。ただ、院生の仲間から聞いたんですが、今回、塔矢名人の息子が参加しているんですよ。かなり強いと」
「あー、そういえば聞いたことあるわね…。確か名人の研究会には参加してるんじゃなかったかしら。芦原君から聞いたことがある気がする。そっか、手強いライバルね」
「…すでにプロ並みとの噂ですからね。気が抜けません」
「あら、慎ちゃんだって、もうプロ並よ。この私が言うんだから間違いないわ!」
「ありがとうございます。がんばります」

−和谷とフクはあっさり塔矢に負けた…。もう一人は外来だったようだが…。塔矢アキラか、どれだけの力を持っているんだ…。








 注目を一身に集めていた噂の塔矢アキラ。彼は必死になって勉強をしていた。手元の本を読みながら、要所をノートにまとめていく。彼が必死に読んでいるその本は、

『猿でもできる、簡単ブログ解説!』

−進藤に任せていたら、いつになるか分かったもんじゃない!そもそも、大事にしているようだから、見せてくれるかも分からないし、ボクが彼から棋譜を借りて、まとめるのが一番だ!

 今、アキラの頭の中を占めているのは、プロ試験ではなく、saiの棋譜だった。それも、進藤ヒカルとの対局棋譜だ。なんとしても見たい。そのため、アキラはヒカルに代わってブログを立ち上げることを目論んでいた。スポンサーは緒方だ。
 夏休みで時間はあるが資金的に厳しいアキラと、プロ棋士のため金はあるが時間がない緒方の目論見が一致した結果だった。ヒカルが公表したくないのであれば、非公開でも構わない。開設者になってしまえば、少なくとも自分たちだけは見れる。

 アキラは必死だった。







「ヒカ
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