第一話 友を得る白馬
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る時代もあったのだから。時代の流儀に合わせて順応するのが俺にとっては先決だ。
返した言葉に、趙雲は嬉しそうに俺と自分の杯に次を注いだ。
「徐晃殿はどこぞの女子と違って中々話が分かるようだ。仕事の無い日は街で付き合って頂こう。それでは、こちらからも質問をよろしいか?」
「構わんぞ。なんなりと聞いてくれ」
答えられる範囲で。さすがに何処を旅していたかと聞かれたらはぐらかすが。
少し思案した趙雲は再度俺を見つめて……すっと目を細めた。
「疲れている、というわけではないのでしょう。牡丹を使ってまで試合を断った理由をお聞かせ願いたい」
鋭い視線を向けられて身が凍る思いだった。関靖から当てられたモノよりも大きな殺気が突き刺さる。
しかし、俺の思考は不思議な事に少しばかり冷静だった。先ほどのやり取りで何が彼女の琴線に触れたのか思い当たり、俺が返すべき解に至る。
「……確かにあの逃げ方は卑怯だったな。そうさな、関靖との貸し借りを減らすいい機会だから利用させて貰った、というのが一つ。勘違いで俺を殺し掛けた心の負担は減らしてやるべきだろう? 公孫賛殿の分も含めてな」
「伯珪殿も、ですか?」
「ああ、優しい人みたいだけど、何処か気を張ってるように見える。太守ってのは気苦労が絶え無いだろうし、たかが俺程度に心を使って欲しくないんだ」
「怯えからとは違ったわけですか……では、他の理由は?」
一寸だけ、険の取れた雰囲気に変わった趙雲は俺を見据えたまま、自身の杯をクイと傾けた。
「いいや、俺は趙雲殿が見立てた通り臆病なんでね。人を殺した事も無いし、戦うのは怖い。趙雲殿は間違いなく強いだろうから、純粋に怖かったのも一つだよ」
「……あなたは武人としての血が騒がないのか?」
「騒がないね。怖いもんは怖い。俺は簡単に死ぬし、死にたくない。そして出来るなら誰も殺したくないし、死なせたくない」
一度死んでいる身で死んだらどうなるのか、なんて事は考えたくも無いし、何よりこの世界を巻き添えにするなんてのもしたくない。俺が死んだら世界を変えられなくなるんだ。自分のせいで誰かが苦しんで死ぬなんてまっぴらごめんだ。
だから、多くを殺さないために、きっとこの先で人を殺さないといけないだろう。怖いし嫌だがやるしかないんだ。
彼女が殺気を込めてまで言ってきた理由は予想がついている。彼女は――
「ただ、あなたの武という誇りを貶めた事は謝らせてくれ。すまなかった」
きっとそういう事。武人というモノは自身の磨き上げた武に誇りを持つモノ。誇りとは、矜持であり、自身の拠って立つモノ。自分の存在全てをそれに傾けているなら、自分が戦ってみたいと認めたモノが卑怯な手段で他人を利用して逃げるのは許せるはずが無い。
俺が平和な暮
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