第一話 友を得る白馬
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分が壁に身体を預けているのが見えた。
「おやおや、伯珪殿が男連れとは珍しい。しかも牡丹が一緒に居るにも関わらずとは……明日は嵐が来るやもしれませぬ」
青い艶やかな髪、蝶の飛ぶ白い服を着たその美女は、くつくつと喉を鳴らして妖艶な流し目を送った。まるで彼の事を見定めるかのように。
秋斗はそれを受けてすっと目を細めた。相手を計ろうかというような視線を送ってくるのなら、自分も相手を見極めようと。
「外でちょっと訳あってな、此処に客として招待したんだ。それと夜に食事を馳走するつもりだ」
「ふむ……牡丹が粗相をした、といった所か」
不甲斐無さにギリと歯を鳴らしたのは牡丹。美女は三人の状態を見ただけで、何があったかある程度の予測を立てていた。
感嘆の息を一つ漏らした秋斗は一歩二歩と前へ進み、その美女に近付いて出来る限り友好的に微笑んだ。
「俺は徐晃、徐公明といいます。根無し草の旅人です」
自然体ながら少しの警戒を行いつつ、秋斗の簡単な自己紹介を聞いた美女は不敵に笑う。
「私は趙雲、趙子龍と申します。伯珪殿の元で客将をしている。まあ、人が足りないので簡易な書類仕事も任されていますが」
白蓮は自分達の仕事を客将にまで回してしまっている事に申し訳ない気持ちになり、ほんの少し俯く。
対して秋斗はその名乗りを聞いて、頭を抱えたくなっていた。
――なんてこった。この世界は有名な人物が女になった三国志で間違いないのかよ。
自分の居た世界の常識が全く通用し無さそうだと考えて、心中を悟られないように秋斗も不敵に笑い返した。
ただ、趙雲がこれから言う発言は予想出来なかった。
「身体運びを見ておりましたが……徐晃殿は武人とお見受け致す。伯珪殿の仕事が終わるまで暇があるのでしたら、私も今日の仕事は終わっていますし……どうですかな?」
すっと立てかけてあった槍を手に持って獰猛な笑みに変わった趙雲。その身から発される圧力に秋斗は些か腰が引けた。
無意識の内に彼の身体運びは現代に生きていた頃と変わっていたのだが、腹黒少女の与えた力から自分の身体の使い方が変わった事には気付いておらず、そこを趙雲に見て取られた。
牡丹と戦った時とは違い、三国志で大きく名を馳せていた武人と戦う事は秋斗にとって恐怖だった。更には牡丹との戦闘は突然にして短いモノであり、自分の実力を正確に把握する時間が足りていない。そんな中で趙雲と戦うなど、出来るはずも無かった。
「申し訳ないのですが今日はご勘弁を。長旅で疲れていましてね。うたた寝をしてしまったくらいに」
チラと牡丹を見やる。秋斗がどのような理由で此処に来たのかをよく分かっている牡丹は憎らしげに顔を歪めて彼を睨んだ。助け舟を出せと強要されたと感じて。しかし
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