第一話 友を得る白馬
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「バカ! お前ら勝手に進めるな!」
大きな声を上げて、何故か白蓮殿は私達の頭を叩き、見ると彼女の顔はかなりの怒りに染まっていた。
「この酒宴の主催者は私だ! 楽しい時間に個人間の勝負事を混ぜるなんて許さないからな!」
「余興程度に楽しめばいいでは――」
言い終わる前に、白蓮殿は私と徐晃殿の杯をひったくり、二つともを一気に飲み干す。
驚愕に目を見開くままの彼と私は彼女に睨みつけられた。
「ぱ、白蓮様!? そんなにお酒が強くないのに……」
「うるさいっ! こいつらが勝手に酒で勝負するとかいうなら私だって飲む! どっちが潰れても私は面白くないんだ! そんなに勝負したいなら二人っきりの時にどっかの店でやれ!」
私達を睨みつけるその姿はまるでわがままな子供のようで、よく見ると目が潤んでいる。
「……星もお前も、今は白蓮様の言う事を聞いてください。何時か勝負する時は私が立会人になってあげますから。ほら白蓮様、お水も飲んでください。そんな一気に飲むと楽しい時間もすぐ終わってしまいます……って水が無いじゃないですか! ちょっと取ってきます!」
おろおろする牡丹に止められ、難しそうに眉根を寄せる彼と同じく、私も煮え切らない所はある。
しかし……今日は思いの外収穫が多かったのだから、今回は自分の望みを抑えてもいい。
「徐晃殿、少し興が覚めましたな」
「ああ、主催者に止められちゃあ無理だ。場を乱してすまなかった。許してくれるか、白蓮?」
「……分かればいいんだ。ふふふ、でもさっきのお前らの顔……くくっ、あははは!」
なんとか許してくれたようで、そのまま白蓮殿は身体をくの字に曲げて笑い始めた。
「白蓮は案外寂しがり屋なのかもしれんな」
「ええ、わがままで寂しがり屋で泣き虫かもしれませぬ。徐晃殿……」
苦笑を漏らす彼と内緒の話をして……ふと、彼の名を呼ぶのが億劫になった。
悪戯好きで、意地っ張りで、捻くれているようで何処か真っ直ぐ。ああ、この方は私と似ているのだ。
それなら、武人としてでは無く、友としての付き合いをしていきたい。本当ならこの勝負の後にでも真名を交換しようかと考えていたのだが。
「徐晃殿も私の事は星と呼んでくだされ。これから白蓮殿を支える友でありますし」
「……勝負で勝ってから言うつもりだったんだがなぁ。分かった。俺の事も秋斗って呼んでくれ……星、さん」
同じような事を考えていたと聞いて、やはりどこか似ているのだと理解が深まった。
しかし……やはり星さん等と呼ばれると違和感が凄かった。
「クク、秋斗殿、“さん付け”は怖気が走るのでやめて頂きましょうか」
「まーたそんな事言いやがる。まあいいや。けど星は敬称を無くすつもりもないのかよ?」
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