第34局
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1学期の終業式を目前に控えた今日、ヒカルは、海王囲碁部の主将岸本に校舎裏に呼び出されていた。
「2年の伊藤が退部したよ。なぜ囲碁部にちょっかいをかける、進藤」
岸本は眼鏡をクイッと押し上げながら、ヒカルに目線鋭く問いただした。
「君たちのせいで、部員は多かれ少なかれ動揺している。部長の俺とてそうだ。俺は正直君と対局したいし、教えを請いたいと思っている。しかし、まわりの視線が言ってるんだ。海王の部長が1年にあっさり負ける姿は見たくない、とね。君にぶつかっていきたくてもできない」
「…それで?」
「お前たちの存在は、俺たち海王囲碁部にとって、百害あって一利なしだ!今後俺たちにちょっかいをかけるのはやめてくれ!」
「…ちょっと気になってたんだけどさ、あの部屋って他に誰もいなかったけど、普段は使ってないの?」
「…あそこは昔の部室で、今は倉庫として使ってるからな。大会があるときに控え室として使うくらいだ。それよりも、人の話を」
「あの部屋としか言ってないんだけど、どの部屋か分かるんだ?」
「……、伊藤にお前と何があったか聞いていたからな。そう思っただけだ」
岸本はまた眼鏡をクイッと押し上げながら答えた。眼鏡に光が反射していて、目元はよく見えなかった。
−?どういうことです、ヒカル?
−…、まぁどうでもいいことなんだけどな。
「普段使ってない教室ってさ、普通鍵がかかってるよね。理科室とか、音楽室とか。ただの2年生の部員が、部屋の鍵って持ってるもんなの?」
「……、何が言いたいんだ?」
「んー、まぁ別にどうでもいいんだけどね。囲碁部にこれ以上かかわる気なんてないし」
「なら今後は」
「ちょっと聞き捨てならないわね」
岸本の声が突然さえぎられた。校舎の陰から歩いて出てきたのは、日高だった。
「日高…」
「ごめん。二人が歩いてるのが見えたんでちょっと気になってね。それより岸本君、部室の鍵は対局室の鍵とペアになっていて3組しかないはずよね?尹先生が1組。そして職員室の鍵保管庫に、1組。これはその日の当番が毎日交代で取りに行って、対局室や部室の開け閉めに使うから、部活が終わるまでは当番の人間が持ってるわね。そして、最後の1組は、部長である岸本君、あなたが持ってるのよね。だったらあの日、伊藤はどうやって鍵を開けたの?」
「…伊藤が当番だったんだろう?それか、尹先生に借りたんじゃないのか?」
「あの日、先生は出張よ。だから、いつもの部活の時よりもみんな少し騒いでいて、途中で抜け出しても誰も気にしなかった」
「…なら、当番だったんだろ」
「…それもありえないの。あの日、私があいつらに説教した後、私が部室の戸締りをしたのよ、誰にも言わないで。…たまたま私が当番だったからね。…最近の岸
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