第三章 始祖の祈祷書
第八話 伝説
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大な戦艦に向けようとしたが――
風防の中に魔力が満ちると共に光が灯った。
「馬鹿な……、わずか五分で全滅だ、と?」
タルブの草原の上空三千メイルに浮かぶ“レキシントン”号の後甲板で、トリステイン侵攻軍総司令官サー・ジョンストンは伝令からの報告を聞くと顔色を変えた。
「て、敵は一体どれだけの数何だ……ひゃ、百か? し、しかしトリステインにそれだけの竜騎兵がいるとは聞いていないぞ」
「サー。そ、それが……、報告では、敵はた、たった一機であると」
「い、一騎?」
ジョンストンが唖然とした顔を伝令に向ける。
直後、被った防止を甲板に叩きつけた。
「ふざけるなっ! 二十騎もの竜騎兵が、た、たった一騎にやられるはずがないっ! 私を馬鹿にしているのかっ!」
総司令官の剣幕に、伝令が怯え後ずさる。
「敵の竜騎兵はありえぬスピードで敏捷に飛び回り、こちらの竜騎兵よりも遥かに長い射程を持つ強力な魔法攻撃を用い、こちらの竜騎士を討ち取ったと……」
怒りで顔を真っ赤にさせたジョンストンが伝令に掴みかかろうとしたが、
「ワルドはどうした! 竜騎士隊に預けたワルドは! あの狂人はどうした!」
「な、なにか叫びながら出て行ったのを見たものがおりますが……どうなったのかは……」
「っ! ……役に立たない狂人だ……っ!」
いつの間にか現れたボーウッドが手を出し、ジョンストンを咎めた。
「兵の前でそのように取り乱しては士気にかかわりますぞ。総司令官殿」
現れたボーウッドに、ジョンストンは矛先を変えた。
「何を申すかっ! これは艦長っ! 貴様の稚拙な指揮のせいだぞっ! 貴様が貴重な竜騎士隊を全滅させたのだっ! この責任はとってもらうぞっ! クロムウェル閣下には報告するからなっ!!」
ジョンストンが喚きながら掴みかかってくると、ボーウッドは杖を引き抜き、ジョンストンの腹に叩き込んだ。一瞬で白目になり気絶したジョンストンを、ボーウッドは落ち着いた様子で従兵に命じた。
運ばれていくジョンストンを見ながら、ボーウッドは後悔していた。一瞬の判断が明暗を分ける戦闘行動中に、ジョンストンの喚き声はあまりにも神経を逆なでするものだ。
不安気に見つめてくる伝令に気付いたボーウッドは、落ち着き払った声で指示をする。
「竜騎士隊が全滅したとて、本艦“レキシントン”号を筆頭に艦隊は未だ無傷だ。例え馬鹿げた力を持つ竜騎兵であっても、一騎ではどうすることも出来ん。諸君らは安心して勤務に励むが良い」
そう、例え一騎で二十騎を討ち果たした英雄であったとしても、個人では変えられる流れと、変えられぬ流れがあるのだ。
所詮“個人”では、この“レキシントン”
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