第三章 始祖の祈祷書
第八話 伝説
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、優しく士郎が手を置く。
「あぅ……」
「ちゃんと飛ぶさ……だが、少し滑走距離が足りんか。コルベール先生っ! 前からゼロ戦に向けて風を吹かせて下さいっ!」
風防から顔を出すと、プロペラ音に負けないよう士郎はコルベールに大声で呼びかけた。
常人を遥かに超える力を持つ士郎は、声の大きさも常人の比ではなく、プロペラ音にかき消されることなく、士郎の声はコルベールに届く。
士郎の声を聞いたコルベールがゼロ戦の前に回ると、呪文を詠唱し烈風を吹かせた。
シエスタから預かったゴーグルを付けた士郎は、ブレーキを踏みしめる。
急激に熱が高まっていくエンジンを冷やすため、カウルフラップを全開にする。
プロペラのピッチレバーを離陸上昇に合わせると、ブレーキを弱め、左手で握ったスロットレバーを開く。
勢い良く走り出したゼロ戦に合わせ、操縦桿を前方にゆっくりと押し込む。
尻輪が地面から離れ滑走し、魔法学院の壁が近づく。近づく壁に怯えルイズが士郎の胸に強くしがみつく。
「今っ!」
壁に当たる寸前、士郎は声と共に操縦桿を引き機体の前が持ち上がり、ゼロ戦が浮かび上がる。
壁を舐めるように飛び上がったゼロ戦は、足を収納しながら上昇を続けた。
ゼロ戦は翼を陽光にきらめき、風を裂き、異世界の空を駆ける。
タルブの村の火災は収まっていたが、そこは無残な戦場へと変わり果てていた。アルビオンの大部隊が草原を踏み散らしながら集結し、港町ラ・ロシェールに立てこもったトリステイン軍との決戦の火蓋が切られるのを待ち構えていた。
上空には、舞台を空から守るため、“レキシントン”号から発艦した竜騎士隊が飛び交っている。
何度かトリステイン軍の竜騎士隊が攻撃をかけてきたが、その悉くが容易く撃退されていた。
そんな折、タルブ村の上空を警戒していた竜騎士隊の一人が、自分の上空、二千五百メイルほどの一点に近づく一騎の竜騎兵を見付けた。
竜騎兵は竜を鳴かせ、味方に敵の接近を告げた。
士郎は風防から顔を出すと、家が黒く焼き焦げ、濁った黒い煙が立ち昇り、ついこの間見た、素朴で、美しかったタルブの村を見下ろす。
「ひどい……」
風防から顔を出したルイズは、眼下のタルブの村の現状を見ると、顔を悲痛に歪め、手で塞いだ口から声が漏れる。
士郎の顔には一見して何の表情も浮かんではいないように見えるが、口の中では歯を折らんばかりに噛み締めていた。
士郎が視線が草原に移すと、そこはアルビオンの軍勢で埋まっている。
その時、士郎の脳裏に、双月と星々の輝きを受けて淡く緋色に染まったシエスタの姿が過ぎる。
感情が見えない顔と比例するかのように、激情が押さえ込まれた目は鈍く光る眼光が輝き、空を
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