第三章 始祖の祈祷書
第八話 伝説
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ニが悪戯っぽい笑みを返す。
「そんなのわたしも知りません。ただ、今のこの状況は利用出来ます。この奇跡とも言える光景を利用し、士気を上げ。それをもって“レコン・キスタ”を叩きます」
「り、利用……」
悪戯っぽく笑いかけながらも、マザリーニの目は全く笑ってはいなかった。そのことに気付いたアンリエッタは、背筋に感じた寒気にも似た何かに目眩を感じる。
アンリエッタの様子にマザリーニは気付いているのいないのか、変わらない表情でマザリーニは話を続ける。
「良いですか陛下。政治と戦で重要なもの。一つは上に立つものは常に冷静であること。二つ使えるものは何でも使うこと。もちろん他にも重要なものはいくつもありますが。まずはこれを覚えておいて下さい。何せあなたは……」
そこまで言うとマザリーニは、視線を顔色が青く、震えるアンリエッタから熱狂が未だ冷めやらぬ兵達に移動させると、どこか悲哀が混じった声で続きを告げる。
「……このトリステインの王となったのだから……」
マザリーニの悲しみと哀れみが混じった声に、アンリエッタは青かった顔色を白く染めながらも、しっかりと歓喜に湧き上がる兵達を見つめながら頷く。そう……わたしは選んだのだ……。
顔色を白く染め、震えながらも、アンリエッタが強い意思を篭めた目で兵達を見つめているのを、マザリーニが誇らしげに、しかし、悲しげに見ている。
「……殿下。今敵は頼みの艦隊が消えたことにより、我々以上に混乱し、動揺し、浮き足立っているのは間違いありません。なので今を持って好機はありませぬ」
「はい」
「それでは、殿下―――」
何気ない風にマザリーニはアンリエッタに声を掛ける。それはまるで、人を散歩に誘うような気軽さで……。
「―――勝ちに行きましょう」
鳴り止まぬ歓声の中。一際高く澄んだ声が響く。
「全軍突撃ッ! 王軍ッ! 我に続けッ!」
士郎の腕の中、ルイズはぐったりと士郎の胸にもたれかかっている。そんなルイズの様子を見下ろす士郎の瞳には、優しげで、それでいて悲しげな色が混じっている。
寄り添うようにもたれかかるルイズの頭を、士郎は無言で優しく撫でる。優しく……労わるように……守るように……
「……」
「んぅ?」
士郎の胸に頬を当て、気だるい疲労感により、微睡む様に目を閉じていたルイズは、優しく触れる士郎の手を感じ、ぼんやりとした声を上げる。ルイズが今感じているものは、今までに感じたことのない程に気持ちのいい疲労感。大きな何かをやり遂げたあとの……何かが体に満ちていくような感覚が伴う疲労。
「しろ……ぅ……」
「…………」
ルイズの頭を撫でながら
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