第三章 始祖の祈祷書
第八話 伝説
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王宮の混乱が混乱が極めていたことから、トリステイン魔法学院にアルビオンの宣戦布告の報が入ったのは翌朝になってからであった。
魔法学院の玄関先で、ルイズたちは朝もやの中、士郎と共に王宮からの馬車を待っていた。待つ相手は、ゲルマニアまでルイズ達を運ぶための馬車であったが、やって来たのは息せききった一人の使者だった。
彼は慌てた様子でオスマン氏の居室をルイズたちに尋ねると、足早に駆け去っていく。その尋常ならざる様子に士郎は嫌な予感を覚え、使者のあとを追い始めると、ルイズも慌てて士郎のあとをついていった。
学院長室の中でオスマン氏は、式に出席するための用意で忙しそうに書類の片付けや、荷物をまとめていると、扉が壊れんばかりに猛烈な勢いで叩かれる音が聞こえた。
「誰―――」
オスマン氏が誰何の声を上げる前に、大声で口上を述べながら王宮からの使者が飛び込んできた。
「し、失礼いたしますっ! 王宮の者です! 申し上げます! アルビオンがトリステインに宣戦布告! 姫殿下の式は無期延期にになりました! 王軍は現在、ラ・ロシェールに展開中! したがって、学院におかれましては、安全のため生徒及び職員の禁足令を願います!」
オスマン氏は顔色を変えることなく、目を細める。
「宣戦布告とな? どこからかね?」
「いかにも! タルブの草原に、敵軍は陣を張り、ラ・ロシェール付近に展開した我が軍とにらみ合っております!」
「アルビオンか……強大な相手じゃな」
顔を伏せた使者が悲しげに言う。
「敵軍は巨艦“レキシントン”号を筆頭に、戦列艦が十数隻。上陸せし総兵力は三千と見積もられます。我が軍の艦隊主力はすでに全滅、かき集めた兵力はわずか二千。未だ国内は戦の準備が整わず、緊急に配備できる兵はそれで精一杯のようです。しかしながらそれより、完全に制空権を奪われたのが致命的です。敵軍は空から砲撃をくわえ、我が軍をなんなく蹴散らすでしょう」
「そうじゃの……それで現在の戦況は?」
「敵の竜騎兵によって、タルブの村は炎で焼かれているそうです。同盟に基づき、ゲルマニアへ軍の派遣を要請しましたが、先陣が到着するのは三週間後とか……」
重いため息を吐いたオスマン氏は、ゲルマニアのある方角へ憎々しげな目を向ける。
「……見捨てる気じゃろうな。三週間もあれば、アルビオンはトリステインの城下町を余裕を持って落とすじゃろうて」
学院長室の外では、ルイズが学院長室の扉に張り付き聞き耳を立てていた。学院長室から戦争という言葉を聞き取ったルイズの顔が白く変化する。
ドアの前で腕を組んで立っていた士郎は、戦争という言葉を聞くとギリリと歯を食いしばり、次にタルブの村という言葉が出ると駆け出した。
「へっ? し、シロウっ!?
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