12:挑発
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ユミルが背中にカバーを被せた武器を背負って再び降りてきたのは、俺達が昼食を食べ終わり……
約束の一時間後に迫りつつある中、俺達が心配し始めてカウンター前へと集まり、それを見たマーブルさんが彼女の様子を確かめるべく階段の一段目を上り始めた時の事だった。
そのユミルは階段の最上階で俺達を見下ろし、すぐ目を逸らしてチッと小さく舌打ちをしてから傍へと降りてきた。
「……先に行って待ってればいいのに」
俺達が並んで座るカウンター前のスツールには座らずそのまま進み、遅れて登場したにも拘らず、急かしている風に扉の前でようやく振り返って口を開けた。元々の可憐な容姿を台無しにする、この世界に来てからはずっとそれがデフォルトだったかのような、やたら上手いジト目とムスッと湿気させた声色なのは相変わらずだ。どうやら、一時間前の泣き叫びながらの退避による精神的ダメージは完治したようだ。
その様子にある種の安堵も感じていた俺は、これみよがしに不敵な笑みを浮かべる。
「そういう訳にもいかないだろ。これでも本当に心配してたんだぜ? ……泣いてた目は、まだ赤いのかな、ってな」
「ッ………ホントに減らない減らず口。もうすぐ、二度とそんな口を叩けないようにしてあげるから」
「おう、楽しみだ」
チリリッ、と俺達の視線の間に小さな火花が一つ散る。
と、その場所にマーブルさんが割り込んだ。
「はーい、散々邪魔しちゃって悪いけど、出かけるその前に……ユミル?」
「……なに?」
俺を睨んだまま、ユミルは答える。
「あなた、決闘の前にその隠してる武器、キリト君達に見せちゃいなさい」
「…………!?」
それを聞くやいなや、ユミルはガバッと背のカバー付きの武器を胸にかき抱いて隠した。
「や、ヤだっ……。なんで今見せなきゃいけないんだよっ」
「別にいいじゃない。どうせ戦う前に、外見だけは見せちゃうんだし」
「ヤだ……今見せたら、戦う前にそこの……ピンク髪の人に、鍛冶スキルで特性看破されてしまうもん……」
名前を呼ぶのが嫌なのか、単に覚えてなかったのか……どの道、名を呼んでもらえなかったリズベットは眉を顰めて苦笑いをした。
「だからって、あなたの戦い方全てが分かるわけじゃないでしょう? それに、私が初めて人に打ったその武器を、鍛冶を本業にしてるそのリズちゃんに、どれくらいの出来なのか見てもらいたいのよ。……それを打った本人が頼み込んでも、ダメかしら……?」
「ま、マーブルの頼みでも……嫌なものは、嫌だよっ」
若干申し訳そうながらも未だに渋るユミルに、マーブルは……
また、あの意地悪い笑みを含ませながら……言葉を続けた。
「でも、あなたはキリト君
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