暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜絶望と悲哀の小夜曲〜
竜使い
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かった。

労せず撃破し、主街区まで到着できる──はずだったのだ。道にさえ迷わなければ。

【迷いの森】というその森林ダンジョンの名前はダテではなかった。

巨大な樹々がうっそうと立ち並ぶ森は碁盤状に数百のエリアへと分割され、ひとつのエリアに踏み込んでから一分経つと東西南北の隣接エリアへの連結がランダムに入れ替わってしまうという設定になっていた。森を抜けるには、一分以内に次々とエリアを突破していくか、主街区の道具屋で販売している高価な地図アイテムによって四方の連結を確認しながら歩くしかない。

地図を持っているのはリーダーの盾剣士だけだったし、迷いの森では転移結晶を使っても街には飛べずランダムで森のどこかに飛ばされる仕様になっているので、シリカはやむなくダッシュでの突破を試みなければならなくなった。

だが、曲がりくねった森の小道を、巨木の根っこをかわしながら走り抜けるのは予想以上に困難だった。

まっすぐ北に向かっているはずが、エリアの端に達する直前で一分が経過してしまい、どこともしれぬ場所に転送されることを繰り返しているうち、だんだんシリカは疲労困憊してきてしまった。夕陽の色はみるみる濃くなり、這い寄る宵闇に焦るほどにエリア脱出はうまくいかなくなる。

やがてシリカは走ることを諦め、偶然森の端のエリアに飛ぶことを期待して歩き始めた。

だが、なかなか幸運には見舞われず──。

とぼとぼ進むうちにも、容赦なくモンスターは襲いかかってくる。レベル的には余裕があるとは言え、周囲が暗くなるにつれて足場もよく見えなくなる。ピナの援護があっても無傷で全ての戦闘を切り抜けるというわけにも行かず、ついに残りのポーションから非常用の回復結晶までも使い果たしてしまった。

シリカの不安を感じ取ったように肩に乗ったピナがくるるる、と鳴きながら頬に頭をすり寄せてくる。相棒の長い首筋をなだめるように撫でながら、シリカは自分の短気と増長から窮地を招いてしまったことを悔やんでいた。

歩きながら、神さま、と心の中で呟く。

──反省します。二度と自分が特別だなんて思いません。だがら、次のワープで森の外に出してください。

祈りつつ、陽炎のように揺らいでいる転送ゾーンに足を踏み入れた。一瞬の目眩に似た感覚のあと、眼前に広がったのは──当然のように、今までと何ら変わらぬ深い森だった。木立の奥は夕闇に沈み、森を包んでいるはずの草原はかけらも見えない。

げんなりしつつ、再び歩き出そうとした時──。

肩の上でピナがさっと頭をもたげ、一声鋭く、きゅるっ! と鳴いた。

警戒音だ。

シリカはすばやく腰から愛用の短剣を抜き、ピナの見据える方向へ身構えた。

数秒後、苔むした巨木の陰から、低い唸り声が聞こえてきた。視線を集中
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