暁 〜小説投稿サイト〜
少年少女の戦極時代U
禁断の果実編
第59話 適切なアドバイザー

[8]前話 [1]後書き [2]次話

 紘汰は過日の咲を思い出して溜息をついた。
 ちなみに現在、“ドルーパーズ”で絶賛バイト中である。

(咲ちゃんはああだし、貴虎に会いにユグドラシルに行ったら面会謝絶とか言われるし。ミッチは退院してから何でか連絡つかないし。ああもうどうすりゃいいんだよ〜)

 咲と最後に会ってから1週間が経った。咲の態度は頑ななまま、雪解けの気配を見せない。
 今や咲と会えるのは、街に出没したインベスを退治する時だけだ。目下、それを待ち望みそうになる自分自身が、最大の敵だ。

(こういう時、俺って一人じゃ何もできねえんだって思い知らされる)

「おい」

 思案をばっさりと切り捨てる横柄な声。その声の主が誰かを紘汰は知っている。

「あ?」
「とっくにカラだ。さっさと注げ」

 かちん、と来る物言いはいつものこと。ボックス席の一つを一人で占領した駆紋戒斗は、今日も今日とて戒斗らしい。

 紘汰は苛立ちながらもコーヒーのケトルを持って行き、カップになみなみと注いでやった。

「どーぞ」
「まったく。気が利かない店員だ」

 アルバイトの身分でなければ言い返してやるのに。紘汰はうっかり挙げそうになった拳を抑えた。

「そんな体たらくだから、室井とも仲が拗れるんだ」
「ここで咲ちゃん関係ねえだろ! ……って戒斗。お前何でそれ知ってんだっ」
「ペコが泣き寝入りしてきた」

 確かにインベス退治の時は咲とも顔を合わせるし、自分たちの間の空気はぎこちない。そんな場面をペコ含むビートライダーズに目撃されたことも一度二度ではない。

(つーかペコ、戒斗に相談しに行くとか、人選ミスにも程があんだろ……いや、精神的にタフっつーべき?)

「第三者が泣き言を上げるくらいだ。相当なんだろうな」
「お前にだけは言われたくねえ。大体、何も言わずに分かってくれなんて無茶だよ。話してくれたら力になれるかもしれないのに――」
「だから貴様は気が利かないというんだ」
「はぁ?」
「室井咲が何をされたらああなるのか、一度あいつの立場になって本気で考えてみろ」

 戒斗は席を立った。そして、紘汰が目を白黒させる間に、会計を済ませて店を出て行った。

「なんだよあいつ…っ」
「おい、紘汰っ。配達頼めるか」

 カウンターの向こう側にいる阪東からお呼びがかかった。

「あ、はい!」

 紘汰は慌ててケトルを持ってカウンターに戻った。

 阪東から、小奇麗にラッピングされたフルーツ籠を渡され、住所を教えられる。紘汰はエプロンを外すと、フルーツ籠を持って店を出た。
[8]前話 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ