オリジナル/ユグドラシル内紛編
第58話 あなたのおかげ
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
月花はヘキサと貴虎を抱え、そっと地上へと下り立ち、彼らをヘルヘイムの廃墟の一つに下ろした。
地面に足を着けたヘキサが不安げに月花を見上げる。月花は(ヘキサに伝わらないが)笑って、ヘキサの背を押した。
まろび出たヘキサの、両の二の腕を、しゃがんだ貴虎が掴んだ。
「大丈夫か? ケガは? 痛いとこはないか?」
「うん。咲が助けてくれたから」
貴虎の目が月花に向く。十中八九、空を翔けたこのアームズが信じられないのだろう。咲自身、よくこのタイミングで飛行アビリティ付きのロックシードを引き当てたと、我ながら感心しているくらいだ。せいぜいヘキサのクッションになればいい、ぐらいにしか思ってなかったのだから。
『ヘキサのおかげだよ』
ヘキサがいれば空だって飛べる。いつかそう言った。ヘキサはそれを咲に叶えさせてくれたのだ。
「……ううん。咲のおかげよ。本当に空、飛んでくれたね」
『ヘキサがいっしょだったからだよ。ヘキサのためだから飛べたんだよ』
少女たちは両手の指を絡め合い、握り合った。
碧沙が身を投げた時、貴虎は動けなかった。
だめだ助からない、と瞬時に弾き出し、諦めた。光実がその場にいても同じだっただろう。
その中で咲だけが碧沙を追いかけて飛び降りた。
コドモの怖いもの知らず、と切り捨てるのは容易い。だが貴虎は、室井咲がそんな直情的な性格でないことも、これまで僅かな付き合いながら知っていた。
室井咲は本気で碧沙のために死のうとした。
自らの身を盾にしてでも、碧沙を死なせまいとした。
(俺には、できない。兄の俺より、室井咲のほうがずっと碧沙を想っていた)
不意に咲の変身が解け、倒れた。碧沙が受け止めたが、碧沙も咲を支えきれず膝を突いた。
「兄さん…っ」
「室井君、室井君!?」
慌てて碧沙から咲を受け取り、寝かせるようにして抱える。
「へ、いき…ちょ、と、キンチョーしてた、から…」
咲はそう言うが、この息切れと苦しげな様子は明らかにそれだけではない。
(そういえば以前、凌馬が言っていた。他の装着者より幼いこの子には、ドライバーがロックシードから引き出す力を抑制している可能性があると。今のヒマワリが全力だとしたら、この子の体にかかった負担はどれだけ……)
そんな場合ではないと理性では分かっていても、やはり貴虎は敗北感に打ちのめされた。本当に、この少女はどこまで碧沙を想っているのか。
「ごめんっ。ごめんね、咲。わたしのせいで。わたしがばかなことしたからっ」
「ヘキサのせいじゃないよ…ヘキサのおかげだよ。それに、光実くん言った…どんなチカラにもリスクはツキモノって…だから、ね?」
涙を浮か
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ