―振り子の担い手―
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「お前のせいだ!」
洞穴のようなモンスターたちの隠れ家に、そんな叫び声が木霊した。その叫び声の主は、ここのリーダー格である《本の精霊 ホーク・ビショップ》であり、彼に糾弾されている者は……この俺、黒崎遊矢だった。闇魔界の戦士 ダークソードこと、オルネッラと名乗った敵を倒した直後、彼は突如としてそんな言葉を俺に叫んだのだ。
「お前がここに来たせいで、闇魔界の連中が来たんだよ!」
激昂したホーク・ビショップの叫びに呼応して、他の精霊たちも口々に俺の事を非難する言葉を吐いていく……隣に立った、リリィを除いて。
「お前が目覚めたら闇魔界の連中が来たんだ……言い逃れは出来ないぞ!」
「ちょ……ちょっと待ってくれ! 俺はあいつ等とは何の関係もない!」
そう非難の声が叫ばれていた俺は、突然の出来事に困惑してしまい、今の事態を理解するまで言い逃れが遅れてしまう。俺は無実だと証明するべく、両手を挙げて関係がないことを叫ぶが……その動きすらも、彼らには警戒されてしまう。
俺と、俺が付けているリリィから借りたデュエルディスクを見る精霊たちははっきりと脅える表情を見せている。俺が何をしようと彼らには届かず、彼らにとって俺は、『平穏を打ち破った危険人物』としか移らない……
「待って……ください。彼は、私たちを、守って……くれました」
「うるさい! そいつを連れてきたお前もグルだろう!」
見かねてリリィが仲裁に入るものの、さらにそのリリィすらも槍玉に上げられてしまう。もはや彼らとは、まともに話は通じない……それほどまでに熱狂している。
そして俺は理解する。彼らは誰かを悪役にしないと、止まることは出来ないのだと。いくら俺がオルネッラから――結果的には――みんなを守ったとしても、その俺を悪役に、敵にしないといけないほど、彼らの精神は磨り減っているのだと……
「出ていけ、疫病神!」
「違い……ます。彼は……」
さらにヒートアップしようとしている精霊たちに、リリィは諦めずに説得を続けるものの、俺はその言葉を遮って彼女の前に出た。これ以上行ってしまえば、彼女もまた俺と同じように、悪役になってしまうだろうから。
「分かった、俺はこっから出て行く。だが、そいつは関係ない」
わざと普段よりぶっきらぼうに、リリィの方を見ずに精霊たちに言い放つ。彼女は助けてくれた恩人ではあるのだから、こんなことに巻き込んではいけない。
ホーク・ビショップはまだ何か言おうとはしたものの、俺の腕のデュエルディスクを見て言葉を飲み込むと、黙って他の精霊たちに梯子を用意させていた。オルネッラが派手に開けた頭上の穴から出て行け、ということだろう。
「遊矢、様……」
精霊たちが天井に梯子を掛けている間
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