―振り子の担い手―
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に、背後にいるリリィがおずおずと話しかけてくる。……そんな風に様付けされるのも、どこか懐かしい遠い出来事のようだ。レイは、みんなは元の世界に戻ることが出来ただろうか、と考えつつ、リリィの方を向き直った。
「助けてくれてありがとう。……悪いが、このデュエルディスクとデッキ、借りるぜ」
――返せるかどうかは分からないけれど――という最後の言葉は言わずに。彼女は無表情ながらも、罪悪感を持った視線で俺を見つめて来る。
「あなたは……」
「おい、準備が出来たぞ」
何かを言おうとしたリリィの言葉に重なって、ホーク・ビショップの威圧的な言葉が重なった。オルネッラとデュエルする以前には、この隠れ家から出て行ってはいけない、と俺を制止していたが、今は一刻も早く出て行って欲しいらしい。もちろん、そんな考えを言葉にはせず、リリィにはあえて何も言わずに梯子を登っていく。
精霊たちが用意していたが、何らこちらの世界の梯子と変わらない、と思いつつ、天井まで登りきって外に出ようとすると――
「待っ……て!」
――下から聞こえて来た、そんなリリィの言葉に後ろ髪が引かれたものの……俺は隠れ家から外に出て行った。俺が外に出て行くと同時に、あったはずの天井の穴は綺麗さっぱり無くなっている。精霊たちの力で直したのか、あるように見せかけた幻なのかもしれないが……試す意味もなく、ここに帰る意味もない。
「…………」
今はもう、出て行った場所よりこれからのことを考えなくては。
まずは、せっかくの高所にいるのだから、この世界のことを俯瞰する。やはり一際目立つのが、そびえ立っている中央に巨大な城……恐らく、あそこが闇魔界の本拠地だろう。そして、今俺が立っている場所も含め、周囲には岩場ばかりで、とても入り組んだ場所になっている。この岩場や、かつて住んでいた廃虚に、闇魔界の軍勢ではない……狩られる者たちは隠れ住んでいるのだろう。
そして同じく、異世界に飛ばされたはずの明日香のこと。この世界の支配者である闇魔界の軍勢は、理由はともかくデュエリスト狩りをしているという……ならば大なり小なり、明日香のことを彼らが知っている可能性は高い。……腕の立つ人間のデュエリストとしてか、倒れていた人間のデュエリストとしてかは、ともかくてして。
と、なると。まずは、自分なりの隠れ家を見つけなくては――
「ほう。デュエリスト、か……」
突如として発せられた声に驚きつつも、声のした方向にデュエルディスクを向けながら、身体をそちらに対して警戒させる。油断していた、こうも早く闇魔界の軍勢に見つかってしまうとは。
「オルネッラがパトロールに行って帰って来ないと思えば……ふむ」
新しく現れた闇魔界の戦士は、冷静にこちらを値
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