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打球は快音響かせて
高校2年
第四十六話 男にしてやるよ
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事があったらまたメールして。ごめん、ごめんね」

浅海はベッドからゆっくりと起き上がり、車椅子に乗せられて病室を出て行った。
その背中に会釈した渡辺は、すぐに浅海と別れた物足りなさと、少しの居心地の悪さを覚える。この病室に松下と自分だけが残ってしまった。知り合いの知り合い、これはかなり気まずい。排他的な思春期の子どもが最も苦手とする薄ーい繋がりである。
帰ろう。練習の事とかはメールで報告でもすりゃ良いや。顔見てきただけでも十分だろう。
そう思った時に、松下が声をかけてきた。

「渡辺君、ちょいと話そうや」
「……は、はぁ……」

松下は相変わらずの微笑みを見せつけていた。



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「高校生なのにブラック飲むんやな」
「甘いもの、あんまり好きやないんで。ご馳走になります。」

松下と渡辺がやってきたのは、病院内のスタバ。病院という事もあってか、お年寄りが多い。
松下と渡辺の若い2人は、その中ではかなり目立っていた。

「……なぁ、今日の奈緒はどう見えた?」
「えっ……」

突然尋ねられた渡辺は、正直に答える。

「いやぁ……思ったより血色ええなーって……」
「……やっぱそう思ったか」

松下はゴソゴソと、ジーパンのポケットからあるものを取り出した。

「これ何か分かる?」
「……化粧品ですか?」
「そ。ファンデーション。まぁ、普通、入院なんて、まず病室にしか居らんのに律儀に化粧する訳はないわな。」
「……あぁ、顔色良く見せようと」
「そういう事。」

松下はため息をついた。

「奈緒、そういう女なんよ。神経質やし、痩せ我慢してばっかり。今回の胃潰瘍も、実は血を吐いたん2回目やったらしい。1回目は放っておいたとか。ここで休んじゃ居られんって。ちょっとアホよな。」
「…………」
「ま、神経質で気にしぃやけ、子どもらの事、よう見れるんやけどな。話聞いてたら、ホンマに細かい所見てて感心するよ。」

松下がコーヒーを啜るのを、渡辺は複雑な表情で見ていた。自分が思った以上に、浅海は身を削っていた。それも胸にくるが、何より、そんな事を目の前のこの大人が知っていて、自分が知らないというのも複雑だった。自分も、自分達も、浅海と長い時間を過ごしているのに。

「……で、浅海先生がボロボロだったって事を僕に言いたいんですか?」
「ん……」
「もっと違う事を僕に言いたいから、わざわざこげにして、話しよるんじゃないんですか?」

渡辺は少しつっけんどんな言い方をした。
したというより、自然とそうなったのは、松下へのある意味嫉妬からかもしれない。

「あー、うん。何というか、うん。来年な、俺と奈緒一緒になるんよ。大学卒業した時から、28の時に結婚
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