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打球は快音響かせて
高校2年
第四十六話 男にしてやるよ
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海先生にいつもお世話になってます。」

ドアを開けて出てきたのは、背の高い、そして結構顔の整った男だった。意外そうな顔をする男に、渡辺は自己紹介する。
表情に出さなかったが、渡辺としては、誰だよ、そんな気持ちだった。
男は渡辺を部屋に通した。

「やぁ。お見舞いに来てくれたのね。あー、通りもん!わざわざ買ってきてくれたんだー!ありがとう。食べられるようになったら頂くわ。」

ベッドから上体を起こして、浅海は渡辺に笑いかけた。渡辺は違和感に気づく。浅海が女言葉を使っている。いつも男っぽい言葉遣いで、それに慣れ切っていたから、ある意味自然なはずの浅海の女言葉がやたらと耳についた。
しかし、顔色もそう悪くないし、少し痩せたようには見えるものの、“元気そう”だった。
……元気だったら入院なんてしてないのだが。

「あ、こちらはね」
「松下真優です。浅海奈緒とは延寿大の同級生で、今は水面銀行で働いてます。今でも仲がええけん、こやって見舞いにも来てます。どうぞよろしく」

ドアを開けた男の名前は松下というらしい。
ニコニコと笑みを絶やさない所から、何と言うか、“良い人”、そう形容する以外ないオーラが漂っていた。延寿大と言えば、城都地方の、この国随一の難関国立大だし、水面銀行がかなり大きな銀行である事も考えると、これは人生かなり上手くいっている人かもしれない。

「渡辺君、君、ネットの高校野球ルポに名前が上がってたで。バッティングセンスが良いってねぇ。凄いねぇ。奈緒からもよく、しっかりしとーし頼りになるって聞くんよ。」
「いえ、州大会は出来過ぎですし……それに大事な所ではダメでしたけ、まだまだっす」

松下はとりあえず、渡辺を褒めた。
こういう事をサラッと言えるから、この独特の良い人オーラが発生するのだろう。
渡辺は表情一つ変えずに返した。世辞に愛想笑いを返すほどの気配りは、まだ覚えていない。

「練習は今、どうなってるの?ちゃんとやってる?」
「はい、とりあえず乙黒さんが仕切ってやってます。もうすぐに11月ですけん、少しずつトレーニング中心にするって。で、残った練習試合は秋大ベンチ外の連中を主に使うって」
「そうね。それが間違いないわね。……乙黒もやっと控えへの配慮を覚えたかしら」

浅海はクスクスと笑う。が、少しむせ返った。
そんな様子にも渡辺はドキッとする。
また血を吐くんじゃないだろうか、そんな心配をしてしまう。

「浅海さん〜胃カメラの準備できました〜」

病室に車椅子を持って看護師が入ってくる。
浅海は渡辺に申し訳なさそうな顔を見せた。

「ごめん、せっかく来てくれたのに悪いけど、私これから検査だから。……ちょっと時間かかるから、戻ってくるの、待たなくて良いよ。チームの事とか、気になる
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