曹操聖女伝第6章
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いた。
曹操はサッと手を一振りし、五行の要素を持ち上げた。くるくる回る火の玉、氷の玉、鉄球、泥の玉、そして、木目の豊かな木の玉。まるで曹操が、神秘的な均衡を操るジャグラーでもあるように、全ての玉が曹操の前で回転していた。
見守る導師達は優秀な弟子に満足して、重々しく微笑んだ。だが、意外な者がこの道術の宴の邪魔をした。
「孫策殿がお話が有ると参っております」
その言葉を聴いた曹操は、慌てて持ち上げた五行の要素を元の位置に戻そうとしたが、孫策は少々無礼にも曹操の許可を待たずに二郎真君と趙公明の知り合いである導師達から道術を学ぶために建てた祭壇に上がり込んだ。
「可愛い顔して随分と勇ましいご趣味を御持ちで」
慌てて振り返る曹操。
「こ、これは孫策殿ではないか。何、私の知り合いに道術を嗜む者がおりましてな」
孫策が皮肉を言う。
「なれば仙人になられては如何か?」
曹操は純粋な子供の様な微笑みで返答する。
「なれば誰が漢王朝を蘇らせるのですかな?」
何とも恐ろしい光景だ。見た目には解らないが並みの者ならその場で失神してしまう程の緊迫感があった。
曹操の近くにいた文官が堪らず怒鳴り散らした。
「これ!司空の御前であるぞ!これ以上の無礼は許されませんぞ!」
だが、孫策に睨まれて急に黙りこむ文官。
曹操は
(私が命じもせぬのに毛を吹いて傷を求める(態々欠点を暴く)馬鹿共だ)
と思ったが、口には出せず、只孫策を睨み続けるのみであった。
「まさかとは思いますが……道術を教わりにこちらを訪れたとは言いますまい」
「無論だ。曹操殿が道術を使える事を今初めて知った」
曹操は孫策の目的が曹仁の娘と孫策の弟である孫匡(字は季佐)との結婚についてだと気が付いていた。順調に勢力を拡大していく孫策の勢いを曹操も警戒していたのだ。
「して、曹操殿は俺の弟に知り合いを譲る気になったんだ?」
曹操は既に腹を知っているくせにと思ったが、出来るだけ明るく振る舞った。
「いや、私は只、中々貰い手がいない曹仁殿の娘が不憫に思っただけだ」
孫策は周瑜の予想通り自分達を侮っている事に気が付いた。
曹操は孫堅を高く評価していた。それは事実だ。しかし―――いや、だからこそ親の七光りと軽く見ていたのだ。そのツケが今回の無理な関係取り持ちである。
(やはり動くのが遅かったか)
最初の内は悔やんだが、曹操はふと孫策の死相を発見した。
「それより……私も孫策殿もかなりの恨みを買っている様ですね」
その言葉に眉を顰める孫策。
「何が……何が言いたいのだ」
「文字通りの意味です。恐らく私も孫策殿も無理な勢力拡大を行った自分を憎む日が必ず訪れるでしょう」
結局、曹操と孫策はそのまま喧嘩別れとなった。
「本当にこれで良かったのでしょうか?」
曹操は平然と答えた。
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