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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十一話 責任と自覚
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入れれば最低でも五百万票は政府に味方する筈だ。
それにしてもなんであんな奴を相手にしなきゃならんのか。ウンザリだよな。馬鹿馬鹿しくてやってられん。帝国と和平を結ぶ、条件は緩めにして協調体制を確立する。その方が同盟にとって利が大きい。人口二百億を超える新市場が目の前に有るんだ。ちょっと考えれば分かる事なんだが目先の事、いや帝国に対する反感が視野を狭くしている。
それともこれが普通で俺が可笑しいのかな。亡命者だから何処かで帝国を憎み切れない、或いは転生者だから何処かで醒めているのか。分からんな、いや、俺だって両親を殺されて復讐すると誓ったんだから他人の事は言えん。しかし大多数の人間が過去に囚われて未来を見る事が出来ないなら民主共和政は政治体制としては極めて運用が難しいんじゃないかな。一部のエリートが国を動かすべきだと考えたルドルフの方が理に適っている事になる。
或いは国政に対して責任を明確にする事が指導者としての自覚を持たせる事になるのか。そうだとすればエリートによる支配階級の創立は意味が有ると言える。もちろん弊害も有る、支配階級が特権階級になれば腐敗しやすいという事だ。ルドルフの失敗は支配階級を血で固定してしまった事だ。おかげで支配階級が門閥貴族と言う特権階級になってしまった。
血では無く実力を基準とし支配階級を流動的なものにすればルドルフによる銀河帝国創立は共和政ローマから帝政ローマへの移行に匹敵する政治的傑作と言われたかもしれない。いや、駄目だな。ルドルフが血に拘ったからゴールデンバウム王朝は成立した。帝位はルドルフの血でスムーズに継承された。
もし血を否定すれば帝位そのものを実力で争う時代が来たはずだ。皇帝が死ぬ度に内乱が起きた可能性が有る。ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスも血統による皇位継承に異常なほど拘っている。スムーズな帝位継承こそが帝国を安定させ繁栄に繋がると思っていたからだろう。だとするとルドルフの失敗は血に拘った事ではない、支配階級の流動性を考慮しなかったことだろう。
民主共和政では国民主権だ、つまり百億以上の人間が同盟の未来に対して責任を持つ事になる。だがそんな事を考えている人間がどれだけいるだろう。政治など議員や政府に任せて終わり、そんなところだろう。責任を意識しない以上自覚など有る筈もない。民主共和政国家においては政治家達の質は市民の質に比例する。市民が責任も自覚も持たなければ政治家達がそれに準ずるのは当たり前だ。
つまり帝国も同盟も支配階級の成立に失敗した事になる。ヤンに訊きたいな、あんたはこれでも民主共和政を素晴らしいものだと褒め称えるのかと。ラインハルトに専制政治の罪は人民が政治の害悪を他人の所為に出来る事だと言っていたな。だが民主共和政だって同じさ。市民は馬鹿を政治家に選んだ事を反省する
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