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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十一話 責任と自覚
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見て良いのでしょうか? トリューニヒト議長、お答えください」
カマキリみたいにひょろひょろした奴が質問すると議会議長がトリューニヒトに答えるように指示した。トリューニヒトが答弁席に向かう。

「えー、捕虜交換は人道的な見地から行われます。政府はこれまで戦争を継続してきた以上、利無くして捕虜になった兵士をその家族の元に帰す義務が有ります。政府はその義務を果たそうとしているという事です」
民主主義国家ってのはどこも同じだな。アホな質問をする議員と建前で答える政府。茶番だよな。でも一番の茶番は俺が政府閣僚として質問に答える立場だって事だ。

政府閣僚は二列六席で座っている。前列には議長、副議長、書記、国防委員長、財政委員長、法秩序委員長が座る。後列には情報交通委員長、地域社会開発委員長、天然資源委員長、人的資源委員長、経済開発委員長、諮問委員長。つまり俺は末席というわけだ。俺の隣はトレル、前の席にはボローン、斜め前にレベロが座っている。

“あの質問している議員は誰です”と小声でトレルに訊ねると惑星シャンプール選出のバリード代議員だと教えてくれた。シャンプールは前線に近い、そのためシャンプールは反帝国感情が強いそうだ。バリードも和平に対して必ずしも積極的ではないらしい。トリューニヒトが人道を持ち出したのもその所為だろう。

「ではヴァレンシュタイン諮問委員長に御訊きしたい。この捕虜交換は貴方の提案だと聞いています。そして帝国との和平交渉も貴方の担当だとか。和平と捕虜交換は本当に関係ないのでしょうか」
関係有るって言っちゃいけないのかな。小声でレベロに訊ねたら面倒な事になるから駄目だって言われた。認めると和平について煩く訊いて来る、条約にあれこれ注文を付けるって事らしい。政府を困らせるのが生きがいみたいだ。

「諮問委員長、お答えください」
仕方ないな、席を立って答弁席に向かった。レベロに向けて軽くウィンクした。
「捕虜交換は二つの理由から提案しました。一つは人道面です。私も軍人でしたから捕虜の事は以前から気になっていました。政府の一員になった事で人道的な見地から捕虜交換を提案したという事です」

「もう一つは何でしょう?」
嬉しそうだな。和平と関係が有ると言って欲しいらしい。
「もう一つは財政問題です。レベロ財政委員長は常々財源が無いと嘆いていました。捕虜を交換すれば捕虜を扶養するための予算が不要になります。少しでも財政委員長の負担を軽減しようと考え捕虜交換を提案させていただきました」

口惜しそうな表情のバリードを後に席に戻った。トリューニヒトは笑いを噛み殺しているしレベロは目を剥いている。自分を捲き込むな、そんなところだろう。他の委員長は呆れた様な表情をしている。でも支出が減るのは事実だし選挙でも有利になるぞ。家族票も
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