スラ子とカニ
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時間は少し遡る。
「ギュー、ギュー(ワカメをくれる子分は、スライムつむりだ)。」
「キュー。」
スラ子は会話しながら、スラ吉の後を着いて行く。
海藻まで、もう少し。
足取りは軽く、ニコニコ笑顔だ。
そう、ここまでは良かった。
ここまでは・・・。
Y字路を左側に進むスラ吉。
当然スラ子も左側に「キュ!」進まなかった。
右側で、ある生き物を発見したからだ。
体長2cm程の小さな蟹。
「キュー。」
近づいてしゃがみ、つんつんと指で突く。
逃げる蟹。
また近づてしゃがみ、つんつんと指で突く。
また逃げる蟹。
「キュー♪」
楽しそうなスラ子。
どうやら横向きで動く姿が、面白いようだ。
って、それどころじゃない!
後ろに居ると思っているスラ吉。
蟹に夢中のスラ子。
ま、まずい。
どんどん別方向に進んでいく。
誰かああぁーっ!
2匹に教えてあげてぇーっ!
気づけと!!
・・・まあ、私の叫びも空しく、今に至るわけで。
「キュ?キュ?」
突いても突いても、蟹が動かなくなった。
スラ子よ、やり過ぎたのだ。
堪忍袋の緒が切れ・・・いや、切った!
蟹は怒っている。
しつこい指を、鋏で挟んだ。
「キュ!?キュー!?」
思わぬ反撃と痛みに、スラ子は挟まれている手を大きく振る。
しかし、蟹は鋏を離さない。
生き物で遊ぶのは駄目だ。
同じ命。
時には今のようなしっぺ返しを受ける。
早めに経験して良かった。
さあスラ子よ、ごめんなさいと謝ろう。
「キュー!キュー!」
なっ!?
スラ子は走った。
挟まれている手を振りつつ、全力で走った。
痛みによる混乱で暴走している!?
走る先は洞くつの奥。
蟹さん、ごめんなさい!
鋏を離してーっ!
「キューーー!」
暴走したスラ子は、広い場所に出た。
そこは地底湖が広がっており、更に奥へ続く道もある。
蟹に指を挟まれてなければ、目の前の光景にスラ子は感動しただろう。
底まで見える透き通った水。
ヒカリゴケに照らされ、青く輝いていた。
美しいの一言。
「キューーーーーーーーー!」
・・・台無しである。
落ちつけスラ子。
暴れると余計に・・・あっ。
「キュ!?」
足を滑らせ、ぽちゃんと地底湖に落ちた。
スラ子が。
「キュー!プグキュゴボコポッ!」
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