カプチェランカからの帰還
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車のシステムを敵に奪われた事まで公表する事になる。
いわゆる落とし所を探しているのだろうと、アレスは考え、
「マクワイルド小隊長。クラナフ大佐がお呼びです」
走ってきた部下が、それが間違いではない事を伝えに来た。
+ + +
「マクワイルド少尉、入ります」
扉をノックして入れば、そこに苦虫を五匹ばかり口に頬り込んで、シェイクしたような顔のクラナフの姿がいた。元来の軍人顔がこのように不機嫌そうにすれば、子供どころか、大の大人でも目をそらしてしまうだろう。
表情の理由を理解して、アレスは苦笑する。
静かに前へと進み出れば、机からクラナフは紙を手にする。
それを一瞥すれば、クラナフはアレスへと視線を戻した。
「ハイネセンからの辞令だ」
「はい」
頷いたアレスに、クラナフは小さく吐息。
やがて、諦めたように紙を前にして、内容を読み上げた。
「アレス・マクワイルド少尉。十月一日より、中尉に任官し、後方作戦本部装備企画課への配属を命ずる」
辞令だと、紙を渡されれば、アレスはもう一度、それを確認した。
目を通しても、書かれた文字が変化することはない。
どうやら聞き間違えではなかったようだ。
眉根を寄せてクラナフを見れば、同様に苦笑を浮かべていた。
「予想外だったか?」
「後半の部分は」
答えた言葉に、クラナフは面白くないとばかりに椅子へと腰を下ろした。
「私にとっては前半も十分予想外だ。すぐには無理でも段階的な二階級昇進でもおかしくない活躍だったと思っているが。何の話もないがな」
「現場は誰だってそういうものです。そこからもろもろを差っ引けば、手取りはこれくらいのものでしょう」
「階級と給料を同じにするなと言いたいが、あながち間違えていないのが悲しいところだ」
苦さを含ませながら、クラナフは小さく笑った。
「悔しくはないのかね?」
「卒業半年で一つ階級があがれば、十分でしょう。それにある程度の理由もわかりますからね」
その部分では、自らが立てた予想に反しているわけではない。
民間人を救出したという華々しい話でもなく――政府からすれば、幾多もある小規模な戦闘――その一つであったということなのだろう。何光年も離れた先に映るのは、レーザー光の飛び交う戦場ではなく、文字と数字。
敵司令官の補殺に功があるとはいえ、それも全面的には信頼していない可能性もある。
「そこまで達観されると慰めの言葉もでないな。だが、後半は予想外と言ったな?」
「ええ」
正直にアレスは頷いた。
カプチェランカの最前線から、後方勤務などまずあり得ない。
艦隊司令部や作戦参謀などの要職は無理としても、少なくとも前線だろうと予想し、それはクラナフも同様
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