第五十四話 思春期G
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には仕方がないことがあるのはわかっている。勝手に希望を抱かせることが、どれだけ無責任なことなのかも理解している。希望と絶望が、表裏一体なことも。
持っていないことに納得して、割り切ることができるのならそれでいい。持っていないことに憤り、努力を重ねることができるのならそれでもいい。だけど、どうしても持ちたいのに持てないと諦めて、涙を飲み込もうとするのなら……それは違うと思った。世の中がそういうものなのだとしても、泣きそうな顔で笑おうとする妹を、アルヴィンは受け入れられなかった。
動揺が広がる妹の前まで、あと数歩というところで、アルヴィンは歩みを止めた。そして、右手で頭の裏を掻きながら、肩に入っている力を抜くように息を吐いた。兄が何を考えているのかが分からないアリシアは、不安で身体を強張らせる。それにアルヴィンは、にやりと笑ってみせた。
「まぁ、あれだ。アリシアの魔法のことも大切だが、まずは先に決着をつけなきゃならないことが、俺たちにはあるよな」
「えっ、けっ…ちゃく?」
「あぁ、なんせ途中で中断してしまったからな。だから……さっきまでの喧嘩の続きをしようぜ、アリシア。アリシアが俺にずるいって言った、その後の続きをな」
アルヴィンの言葉に、アリシアの頭の中は真っ白になった。彼女は兄に会えたら、真っ先にそのことについて謝るつもりだったからだ。その話題を兄から出してくれたが、アリシアの望む展開にはならなかった。喧嘩の続きということは、許してはくれないということだからだ。
言葉が出ないアリシアを、アルヴィンは目を逸らさずに見据えた。そして、人差し指をビシッと前に突き出し、広場に響き渡るような声で、堂々と言い放った。
「アリシアは俺がずるいって言っていたけどな、……そんなもん、アリシアの方がずるいわ! なんでリニスの好感度が、最初っからマックスなんだよッ!? あっさりともふもふを、堪能できているんだよ! あの毛並みを簡単にもふれることが、どれだけ尊いことかわかってねぇだろォーー!!」
『ものすごくどうでもいいことを叫びだした』
ありったけの思いが籠った声が、この場にいた全員の耳に反響した。魂が籠った叫びとは、まさにこういうものを言うのだろうか。彼の叫びは後半にいくにつれ、若干涙声になりかけていた。アルヴィンの本気度が窺えた。
誰もが言葉を失うというか、どう反応を返したらいいのかがわからなくなった空間。だが、この中でアリシアだけは、アルヴィンの言葉に反論することができた。
「そ、そんなのお兄ちゃんの方が、ずっと羨ましいよ! お兄ちゃんは、お母さんの魔力や魔法の資質を受け継いでいるもんッ!」
「そうだけど、俺がそれにどんだけ泣かされているのかを知っているだろ! アリシアだって、母さんの家事スキ
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