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万華鏡
第七十三話 雪その一

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               第七十三話  雪
 冬は寒い、それは神戸なら尚更だ。
 その中で登校しながらだった、琴乃は自分の吐く息を見て一緒に登校しているプラネッツの四人にこう言った。
「息がねえ」
「真っ白ね」
「もうね」
「そうよね、冬よね」
 冷気の中で息がそうなっている、それを見ての言葉だ。
「もうね」
「霜もおりてるしな」
 美優は右手の芝生を見た、見ればだった。
 白く化粧が為されている、その白いものを見ての言葉だ。
「本当に冬だな」
「冬真っ盛りね」
 景子はこう言った、その冬の白を見ながら。
「完全に」
「一月も半ばでね」
「これからお水取りまではね」
 奈良の東大寺のそれだ、関西では冬はこれが行われるまでは終わったとはみなされない。それで景子も話に出したのだ。
「冬だから」
「三月十五日ね」
 琴乃はそのお水取りの日を言って苦笑いになった。
「春は遠いわね」
「特に神戸はね」
「そうそう」
 ここで山の方を見た琴乃だった、高い山が街の背にある。
「山から風が下りてくるから」
「六甲おろしね」
「六甲おろしはきついわ」
 冬には特に、というのだ。
「厳しいわ」
「あかぎれとかね」
 里香はこれを言った。
「気をつけないと」
「冬だからね」
「色々と」
「私は神戸の冬はまだ大丈夫だけれど」
 秋田生まれの彩夏はこう言えた。
「けれどよね」
「あたしなんて沖縄だからさ」
 美優は苦笑いになって言った。
「厳しいよ、神戸の冬は」
「やっぱりそうよね」
「まあ雪はさ」
 それはと言う美優だった。
「見られるけれど」
「雪ね」
「そうそう、それはさ」
 それはと言うのだった。
「まあいいけれどな」
「それ以外はよね」
「ああ、辛いよ」
 どうしてもだというのだ、沖縄生まれの美優にとっては。
「お水取りが恋しいよ、実際」
「三月十五日ね」
「早く来ないかって毎年思うよ」
 しみじみとした言葉だった。
「春になれってさ」
「そういえば広島でもね」
 琴乃はここでこの場所について言った。
「冬は雪降るのよね」
「江田島でも?」
「あそこでもなの」
「そうよね、やっぱり」
「ええ、降るわよ」
 その通りだとだ、里香が琴乃に答えた。
「あそこでもね」
「あったかいのよね」
「それでも降るのよ」
 冬には、というのだ。
「あそこもね」
「そうなのね」
「日本で雪が降らないのってあまりないわ」
「沖縄とか鹿児島位じゃね?」
 美優がこう言ってきた。
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