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トワノクウ
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第二十三夜 長閑(四)
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「露草さん。彼女の身の振り方はもう決まってますか?」

 菖蒲はおもむろにそう聞いてきた。

「梵天は手元に置くつもりなのか、お役御免で放り出すのか。知ってます?」
「俺に聞くな。俺だって今日起きたばっかで梵と話すヒマなんてなかったんだよ」

 嘘だ。少なくとも梵天からくうの境遇と親について説明を受けるくらいの時間はあった。

「じゃあ梵天に伝言お願いします。もし彼女を追い出すなら私に下さいって」
「はあ!?」

 露草は先ほどよりさらに仰天した。この節操無しとか幼女趣味とか罵倒は色々と浮かんだが、どれも口にはできなかった。悔しいが菖蒲は一度言うとあとが怖い。

「学もありますし、教えれば吸収は速い。ここで先生してもらいます。我ながらいい考えだと思うんですけど」

 ――梵天はどうするつもりだろう。

 認めるのは癪だが、くうを露草のために連れてきたのだとしたらくうの役目は終わりだ。それで放り出すとしたら――釈然としない。
 せめて菖蒲に預ければくうも生活の保障ができていいのかも――

「彼女、帝天に似てるんでしょう?」
「梵が言うには不気味なくらいに生き写しだと」
「だったらよけいに手元に置きたいです。帝天そっくりの帝天の娘なんて、ねえ。いろいろ遊び甲斐がありそうです」

 前言撤回。こいつに預けるくらいなら天座に残すか、いっそ自分が面倒を見る。

「露草さん? つーゆーくーさーさーん」
「っ!! つ、伝えりゃいいんだろ伝えりゃ!」

 露草は慌てて至近距離にいた菖蒲から身を引く。白緑の(たい)を使っているせいか菖蒲に対しては一定の緩みが生じ、今のように詰め寄られても気づけないことが多い。

「それとね、お礼なんて、初めて言われちゃったんですよ」
「礼?」
「ええ。貴重なお話をありがとう、って。私がしたの、私がどれだけ人間嫌いかって話ですよ? 普通そんなえげつない話を聞かされてお礼が言える人なんていませんでしょう」

 露草は、自分が菖蒲の述懐を聞いたときのことを思い出し、盛大に顔をしかめた。

 菖蒲には、妻を喪う原因を作った人間≠ノ呪詛を吐く時がある。歳月を重ねるごとにねじくれていく菖蒲の心を覗くたびに、梵天でさえ当てられていたほどだ。

「言ったのかよ。梵の紹介とはいえ、初対面の女に」
「ええ。それで『ありがとう』ですからね。梵天でさえ聞きたくないと思わせるような内容に『ありがとう』って」

 ――あれを聞いて、くうは平気で笑っているのか。
 否。平気なわけがない。きっと無理をして笑っている。

 消沈しているとは思ったが、まさか原因が「これ」だったとは。

 露草は大声でくうを呼んだ。

「おい!! 帰るぞ!!」




 いきなり呼
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