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打球は快音響かせて
高校2年
第四十五話 夢が終わり、夢が始まる
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かに信じがたい話だった。

「……なぁ」
「ん?」

気まずい沈黙の後、渡辺が不意に口を開いた。

「今日の試合、負けたんは、浅海先生のせいか?」

突然尋ねられ、周囲はドキッとした。

「いやぁ……」
「そんな事は……」

首を傾げる者が多い中で、宮園だけがキッパリと言い切った。

「確かに、浅海先生の今日の采配は裏目を引いていた。向こうに読まれてたと思う。牽制トリックプレーもエンドランのサインが出た時ドンピシャで仕掛けてきたし、スクイズの時にショートバウンドで外されたし。」

あまりにハッキリ言うので、宮園以外はギョッとした。空気を読まないことに誇りを持っている鷹合ですら、それはちょっと……という顔をしていた。

「……じゃあ宮園……俺たちがここまで勝ってこられたんは……」
「それは浅海先生のおかげだ。俺もそれは分かってるよ。少なくとも海洋には、あの人の奇策が無きゃ勝てなかった。」

続けて尋ねようとする渡辺を遮って、宮園は言う。それを聞いた渡辺は、フッと笑った。

「……そうよなぁ……あの人のおかげで勝って来られたんよなぁ……」

渡辺はつぶやき、ソファにドカッと腰を下ろした。そして息をすぅ、と吸い込み、
一気にまくし立てた。

「……何だかんだ俺ら、ずっと浅海先生に勝たしてもらってきたんや!オノレの力で勝ってきたんやない!先生は今日、俺らの打力を信じんかった!エンドラン仕掛けるんも、バントした所で次が続くか分からんかったからや!スクイズ仕掛けるんも……俺があの場面で打つとは思わんかったからや!!…………俺はそれが何より悔しい…………相手には、そら負けるかも知れんけど、ずっと一緒に戦ってきた先生に信じてもらえなんだなんてなァ……」

気がつくと、渡辺の目から涙がまたこぼれ落ちていた。目元はもう、ヒリヒリと痛んでいる。

「……別に先生にムカついてはないけど……力のない俺らを勝たそうと、一生懸命やってくれてんやし……ほんで今、あんなに責任背負いこんどんやし……でも何か悔しいんや……くそっ……くそっ…………」

渡辺は俯き、ソファをガシガシと拳で叩く。
聞いている皆も、全員が俯き、表情が沈んだ。
枡田は、もらい泣きして鼻をしきりに啜っている。

「……俺は決めた!」

渡辺は机をバン、と叩いた。
俯いていた顔を上げ、力のこもった目で同僚を見た。

「夏こそは絶対、浅海先生を甲子園に連れていっちゃる!浅海先生に勝たしてもらうんやない、俺らがあん人を勝たしちゃるんや!サインなんか出さんでもええ、座ってるだけでええ!俺らがあん人を連れていっちゃるんじゃァ!」
「せやせや!俺がホームラン5本でも10本でも打ちゃあ、サインら出さんでも勝てるわい!全試合コールドで甲子園に行った
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