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トワノクウ
トワノクウ
第二夜 翼の名前、花の名前(一)
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ノ女空」
「しののめ――?」
「? 何か?」
「いや、何でもない。私は朽葉だ。よろしくな。しかし、空、か。変わった名前だな」
「空白って意味なんですよ。カラッポのスカスカ。いつか欲しいものができた時いくらでも詰め込めるようにって」

 人でも物でも、想いでも命でも、何をもいっぱいに自分の中に包み込めるように。

「――いい名前だな」
「はいっ」

 くうは笑った。母がつけてくれた誇らしい名前だ。

(朽葉さんの名前の意味も聞いていいのかな?)

 ――朽ち葉とは、襲の色目における花山吹。平安においては陽光の色。派生色が多く、その多さは「朽葉四十八色」とあだ名されるほどである。

(花咲かず実らず、それでも自ら照り輝く、葉)

 くうはじっと朽葉の表情を見つめて。

(やっぱやめときましょう。難しすぎますもんね)

 と結論を出した。

「それにしてもお前は肝が据わった娘だな。まったく動揺もしていないし。昔の知り合いを思い出すよ」
「これでも動揺しまくりですぅ。ほんとは気絶したいくらいですけど、また目が覚めて結局ここにいるまま、夢が覚めるなんてことにならなかったら、ショックで今度こそ大暴れです。そしたら朽葉さんにもご迷惑ですし。寝て起きて元いたカプセルに戻れるなら自分で頭でもなんでも打ってそうします。でも、そうはならないんです。せっかく美人の案内さんがいるんですから、考える材料を集めたほうが建設的かなー、なんて」

 朽葉を見ると面食らっていたが、ふいに噴き出して苦笑した。

「現実的だな、その歳で。あいつらとは大違いだ」

 女の子のようにきれいな笑顔だと、思った。
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