第百六十二話 ならず聖その四
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数は相当減っていた、それで。
その彼等を見てだ、信長は命じた。
「捕らえよ」
「高野山の者達をですか」
「一人でも」
「そうじゃ、捕らえよ」
こう命じるのだった。
「よいな」
「はい、それでは」
「あの者達を」
こうしてだった、残った高野山の者達の中には捕らられる者達も出た、他の者は死ぬまで戦い洗浄には誰も残っていなかった。
捕らえられた高野山の者達は信長の前に引き立てられた、信長はその彼等の前におりそして話を聞くのだった。
「何故法主の言葉に従わなかった」
「知れたこと、法主が間違っておられるからじゃ」
「そうじゃ」
だからだとだ、こう返す彼等だった。縄で縛られていても目は負けていない。
「だからこそじゃ」
「我等は御主を倒してじゃ」
「そして高野山を守ろうとしたのじゃ」
「それだけのことじゃ」
「ふむ、言いたいことはわかった」
信長は彼等の言葉を聞いてまずは頷いた、そして。
そのうえでだ、今度は彼からこう言った。
「では仏の道にもじゃな」
「そうじゃ、間違ってはおらぬ」
「我等はな」
「そもそも仏法を否としているのは御主ではないか」
「御主こそ仏敵じゃ」
その信長にこう返す。
「その御主を討つことこそ義」
「御仏の道じゃ」
「安土の城も仏像や墓石を使っているな」
「それこそがその証じゃ」
「御主が仏敵であるな」
「あれは当然のことよ」
信長は彼等にこう返した。
「安土のことはな」
「何っ、当然というのか」
「そう言うか」
「では御主やはり」
「仏敵か」
「魔王なのか」
「仏像や墓石の力を使ったのじゃ」
これが信長の言葉だった。
「そうしただけじゃ」
「力!?」
「力をというのか」
「そうじゃ」
そうしたというのだ。
「城にな」
「それはどういうことじゃ」
「一体」
僧や聖達が信長の今の言葉に口々に問うた。
「御主が御仏の力を使ったというのか」
「魔王である御主が」
「城を築く為に」
「そうしたというのか」
「左様」
その通りだとだ、信長は答えた。
「わしはそうしたのじゃ」
「どういうことじゃ、墓石を石垣に使うことは」
「うむ、地蔵尊の像もな」
「それはただ石垣に使ったのではないのか」
「そうではなかったのか」
「墓石にも仏像にも力がある」
またこう言った信長だった。
「その力を集めてじゃ、城とそこにいる者達、ひいては天下を守る為にじゃ」
「墓石や仏像を使ったというのか」
「そう言うのか」
「そうじゃ、それで魔王と呼ぶなら呼ぶといい」
信長は悠然とした笑みと共に言った。
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