トワノクウ
第一夜 空し身(二)
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? さっきまではもっとこう……カプセルの中にいるってイメージ強かったのに、今は本当に外にいるみたい。リアルすぎるからマップ外だったのかしら?)
とにかく進まないと埒が明かないので、くうは横にあった橋を渡ることにした。
橋の中央に差しかかった頃、目の前に妙なものが現れた。
「敵キャラ?」
尋ねてバーチャルアイコンが答えるはずもないが、答えるのではないかと思えるくらい目の前のアイコンは精巧だった。
北極グマの身体にライオンの頭を接いだような獣と、その上に乗る、一つ目の布で顔を隠した水干姿の小人。
悩んでいると後ろで悲鳴が上がった。時代がかった風貌の人々が口々に叫んでいる。
「妖だ! 妖が出たぞーっ!」
「おい、ありゃあ鵺じゃねえか!?」
「妖祓いを呼べ!」
「お嬢ちゃん、危ないよ! 逃げなさい!」
驚いた。敵キャラクターが登場したのにモブキャラクターが動いている。騒ぎ方もリアルだ。これもマップ外ゆえの精巧さだろうか。
「敵ステータス表示」
しかし、視界は変化せず数値も表示されない。目の前にいる敵アイコンも変化しない。
「ん〜? ステータス表示っ」
やはり視覚情報に変化はない。マップ外に来た弊害がこんなところで現れたのだろうか。HPも分からない敵とやり合うと、こちらのLPが削られる。バトルフェイズは始まらないようだから一旦引き返そう。
結論付けて、くうは背を向けた。集まった見物客の顔は総じて青白い。
「危ない!!」
見物客の注意と高い声での悲鳴が何重にも上がった。
首を傾げる。なぜこんなにも彼らは恐れているのだろう。ただのアイコンのはずの彼らがなぜこんなにも感情豊かなのだろう。
がっ、と猛獣の前足がくうの頭を捉えて橋に押し倒した段になって、くうはやっとその理由を理解した。
『ひとつ、虚とはなんぞや』
くうが懸命に上体を起こすと、猛獣の爪が振り下ろされた。くうの視界は真っ赤になった。
「きゃああああああああああああ!!!!」
くうは左目を押さえて転がり回った。
熱い熱い! やめて助けて! 目が焼ける! いっそこの眼球を抉りだして! 痛い!
(これ、ショックオンリーじゃない。まぎれもない現実の痛み! なんで!? これはバーチャルなのに、ゲームなのに、現実じゃないのに!)
どうにか手をどかした時には、猛獣が今度はごつごつした歯を誇示するように大口を開けていた。
食われる――!
『ひとつ、実とはなんぞや』
逃げることもままならず、くうは頭を抱えてうずくまった。
「――動くなよ、娘」
耳だけが、他人の訪れを脳に伝達した。
(え――人?)
かち
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