第八話 土の忍者その八
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「私達のことは天極先輩からお聞きでしょうか」
「火や水を出せるとのことですね」
「はい、こんな感じで」
ここでだ、実際にだった。
「出せます」
「石ですね」
「私はこれなんです、土です」
こう言いながらだった、菊は自分の右手に出した丸い手の平サイズの石を握りつつ医師に対して話をした。
「これ内緒ということで」
「わかっています、診察している方の個人情報は守ります」
医師として、というのだ。
「これは当然のことですので」
「そうですか」
「ご安心下さい」
患者の中にはとても人に言えない事情を抱えている者も多い、それを言ってはならないことは医師として最低限の義務だ。
だからだ、この医師も三人にこのことを約束したのだ。だがそれと共にだった、彼は三人にこうも話した。
「しかしそうした事例は」
「力のことはですか」
「私もはじめて見ました」
そうだというのだ。
「そして近代医学の専門分野ではないですね」
「それじゃあ」
「これは気でしょうか」
考える顔で言う医師だった。
「気なのでしょうか」
「気ですか」
「そうです、気功の一種でしょうか」
こう三人に話すのだった。
「そう思いますが」
「気功ねえ」
ここで言ったのは薊だった、考える顔で。
「よく話としてはあるけれどな」
「はい、確かに人間には気があります」
このことは医師も否定しない。
「例えば名人伝という小説ですが」
「名人伝?」
「中島敦の小説よ」
名人伝と聞いていぶかしんだ薊にだ、菖蒲が話した。
「山月記の作者のね」
「山月記はあたしも知ってるけれどさ」
薊はこちらは知っていた。
「そんなのも書いてたんだ、あの人」
「弓を使う人のお話でね」
「ああ、それで弓を極めてか」
「ええ、弓矢を使わずに気で射ることが出来る様になった人の話よ」
「そういうお話か」
「そう、それが名人伝よ」
こう薊に話すのだった。
「それでその作品を読んでもわかるけれど」
「そう、人間には気があります」
このことは間違いないとだ、医師は三人に話した。
「このことは間違いありません」
「薊ちゃんの中国拳法とかでもよね」
菊は薊に顔を向けて彼女に問うた。
「百歩神拳とか」
「あれな」
「映画でもあるけれど実際にあるのよね」
「奥義中の奥義だよ」
中国拳法の、というのだ。
「気を使うのはマジで難しいんだよ」
「それでもよね」
「ああ、あることはあるよ」
気功、それはというのだ。
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