トワノクウ
第一夜 空し身(一)
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している。剣道で鍛えた男子はこんなふうに格好よくなるものなのだろうか。
「ちょっとここのスタッフ何やってんの! 明らかな手抜き作業じゃない。あとでクレームつけてやんないと」
薫が苛立たしげにコードを蹴とばした。着物で乱暴な動きをすると足が露出すると考え至らないのは、彼女が帰国子女だからか。
「そ、そこまでしなくてもいいよ、薫ちゃん」
「あんたのためじゃなくて。これほっといたらあとから来た人が困るでしょーが!」
「そ、……そうだよね。ごめんなさい」
しぼむくうにはお構いなしで、薫は肩を怒らせながらコードを避けて歩き出した。
「怒られちゃいました」
「はは。あれも長渕さんなりの照れ隠しじゃない?」
「そうですかね?」
「そうだよ」
潤はくうの手を引いて立ち上がる介助をしてくれた。好きな男子に手を握られたのは至極幸せだが、しかも今日はかなりいい雰囲気で何度もこうして手を繋ぐ機会があったが、くうの関心は別の点にあった。
「潤君、薫ちゃんのことよく分かってるんですね」
ちょっとだけ悔しい。出席番号の前後なので仲がいいのはしかたないが、この分かり合っている感が悔しい。
「篠ノ女さん?」
「なんでもありませんっ」
くうはアナウンスの誘導に従い、潤の硬い手を離して歩いていった。
カプセルは三色。赤、青、紫。くうは青いカプセルを選んだ。
(天使の卵みたいなデザインです)
アナウンスがカプセル内に入るように指示した。薫が紫、潤が赤のカプセルに入ったのを見てから、くうもカプセルに入った。
(中から見ると意外と広いですね。表面は……マジックミラーですか。外がよく見えます)
くうは台座に立ち、ちょうど腹の高さに設置されたリングの所定位置に両手を乗せ、上からぶら下がったヘッドギアを装着した。この手のシステムはゲームセンターでもやった経験がある。
『本日は次世代型体感アトラクション「Rainy Night Moon」にお越しいただき、まことにありがとうございます』
アナウンスと共に内部の鏡面がスクリーンに反転する。
「うわあ! ほんとに明治時代です!」
ヘッドギアのエフェクトと合わせて本当にその場にいるかのような臨場感だ。背の低い建物。道行く和服の人々。活気と喧噪。ドラマで観た明治そのものだ。
説明画面では実際の操作模様がくり広げられる。くうも実際に操作してやり方を覚える。バトルフェイズの武器としてくうは「鎌(Death-scythe)」を選択した。単純に攻撃値が高いからだ。
『当アトラクションはショックオンリーとなっております。ゲーム内でのダメージは一切肉体には反映されません』
体感型の最大の特徴はバトルアドベンチャーでの臨
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