トワノクウ
第一夜 空し身(一)
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を繋ぐ。
「し、篠ノ女さん?」
「ちょっと何すんの」
「えへへ。なんとなく、です」
動揺しきりの潤と鬱陶しそうな薫に、くうはにっこり笑った。
ゲーム内でのコスチュームをレンタルで着るのもゲームの内らしい。くうと薫は選択した服を持って更衣室に入った。
くうはレースをあしらい肩を露出した黒いドレスと鍔広帽子。
薫は白地に三日月を散らした紬と濃紫の陣羽織のアンサンブル。
更衣室で着替えていると、黙っていた薫がふいに話題を振ってきた。
「あんた、中原とはどうなってんの」
「潤君? どして?」
「好きなんでしょ、中原のこと」
ファスナーが背中の皮膚に食い込んだ。
「いひゃ!? ふぇ、あれ!?」
地味に痛い。くうは慌ててファスナーを解こうとするが、パニックになって外せない。
軽く涙目になったところでようやく薫が手伝ってくれて外せた。
「脈アリだと思うよ。とっとと告れば。今日中にでも観覧車とか乗って。せっかくの遊園地だし」
「で、できるかな……迷惑じゃないかな?」
「あたしが知るか。傍で見てていい加減ウザイ。とっととくっつけ。ほんで永久にふたりの世界作ってろ」
「ひ、ひどいですぅ〜。投げやりすぎないっ?」
「なんとかなるでしょ。中原、あたしに『篠ノ女さんって好きな人とかいるのかな?』って聞いてきたからさ。気になってんでしょ、あんたのこと」
「そ、そう思う? ほんとにっ?」
「ほんとほんと。つか行くわよ。その中原待たせちゃ悪いし」
「う、うん」
更衣室を出る薫に付いて行きながら、くうは潤に意識されているかもしれないという事実に夢中だった。
「こら、足元見て歩けって」
「はぅっ」
くうは薫の忠告で現実に帰ってきた。
「着いたわよ」
アトラクションのあるメインルーム。晴れた大空を象った天井の装飾が、地平線となるドームの端まで続いている。
階段を下りた先にある床はガラス張りになっていて、下には和洋が混在し始めた町並みのミニチュアが一面に広がっている。おそらくこれが冒険の舞台だ。そして、中央に三角形に配置されたカプセル、あれらがこのゲームを体感させてくれるのだ。
「わあ、すごーいっ」
「あ、こら、くう!」
くうは好奇心のままに階段を駆け下りた。そして、いざカプセルに駆け出そうとして、床を這っていたコードの群れに躓いた。
ぶつかるかと思いきや、誰かが驚くべき速さでくうと床の間に滑り込んでくうを受け止めた。
「びっくりした〜。来たら篠ノ女さんがこけてんだもん。怪我、ない?」
「潤君……だ、大丈夫ですっ」
潤はくうを抱えたまま息をついた。
近くで見つめると、性格に反して精悍な顔だちを
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