トワノクウ
第一夜 空し身(一)
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「慣れないおめかしするからですね。えへへ」
「そう? 僕はいいと思うけど」
「いい、でしょうか?」
くうは帽子のつばを握って潤を窺う。
肩にレースをあしらった濃い緑のミニスカワンピース。首元には黄色いスカーフ。肩も足も露出度が高い恰好は普段なら絶対しない。
「うん」
潤はそれだけだったが、柔らかい笑顔とセットだったのでくうには充分だった。
「くう、中原、イチャついてないでとっとと来い!」
「イチャついてません!」
くうたちに喝を飛ばしたのは、先頭集団からあからさまに外れた位置を歩いていた女子――長渕薫だ。
くうと潤は追いついて薫に並ぶ。
「とっとと行くよ。計画的に回んなきゃなんないし、菜月野たちとはぐれたら合流だけで一日潰れる」
「ごめんなさーい。ちゃっちゃか歩きまーす」
「はぁ。あんた、ほんとに分かってんの?」
薫はくうと正反対にボーイッシュな出で立ちの女子である。髪はサラサラで口元も目元も整っているから、着飾ればどこの令嬢かと思うくらいの美少女なのに、いつも機能性優先の服しか着ない。もったいない。
「マイペース結構だけど団体行動の時くらいフットワークよくしなさいよ。あんた、ただでさえトロいんだから」
「は、はぅぅ」
「まあまあ。長渕さんもそう怒らないで。計画的に回るんでしょ? せっかくの楽研親睦会なんだから、あんまりカリカリしないで行こう? 篠ノ女さんが遅れたら僕が引っ張ってくから。ね?」
「――はいはい。その子の世話は中原に任せるわよ。行きましょ」
「「うん!」」
まずはアドベンチャーよりも屋外アトラクション&イベント優先でいこう、との部長でギタリストの菜月野叶子の意向によって、外回りコースを選んだ。3Dアドベンチャーなら、今時の若者は自宅に6台か7台は確実に持っているものだからだ。
もっとも、篠ノ女家の教育方針は「体感型ゲーム禁止」なので、くうとしては早く行きたくてうずうずしていたが。
ジェットコースターに巨大迷路、メリーゴーランド、コーヒーカップ、おばけ屋敷、パレード、おみやげ店。定番とされる屋外アトラクションとイベントを大抵回り終えた頃合になって、菜月野が行きたいアドベンチャーがあると言い出した。
ここまでのリードは菜月野か、ベースの夕日坂茜がしていたので、くうたちも文句は言わずに付いて行った。
「ここだここ! 新しいアドベンチャー」
菜月野は丸めたパンフレットでズビシ! とそのアトラクションドームの看板を指した。
「Rainy Moon Night=H」
「そ! 東雲コーポレーションお得意の仮想現実をふんだんに盛り込んだ明治浪漫冒険譚。つっても東雲本社じゃなくて
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ