第5章 契約
第89話 吸血鬼伝説
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冥府や魂。それに、輪廻転生のシステムに関しては判らない事だらけなのですが……。
ただ、吸血鬼に襲われて生命を失った者の魂に関しては、以前にも遭遇した事が有ります。
サーヴァント化されずに、そのまますべての血液を失った被害者の魂と言うのは、自らが死した事にすら気付かず、ただ恍惚とした表情。……夢見心地の状態で死体が発見された位置に、すべてが消滅するまで立ち尽くしているだけ。
そう言う、ある意味、非常に幸せな状態と成るのです。
そんな魂を癒して、彼、彼女らに進むべき道を開いてやるのも俺たちの仕事のひとつでしたから。
逆に言うと、吸血鬼による吸血行為と言うのは傷みや苦痛などを与える物ではなく、そう言う感覚……快楽に近い感覚を相手に与える物らしいのですが……。
「この辺りに伝わって居る昔話の中で、吸血鬼に関係している有名な話をこの坊主に教えてやってくれるか、ガリアの王太子妃」
俺の問い掛けを無視するかのような雰囲気。相変わらず、猫そのものの仕草で毛繕いを行いながら、タバサに対してそう話し掛ける風の精霊王。
う〜む。この風の精霊王に関しては、どうも自ら率先して御仕事を行おうと言う気はないのか、今度は情報の説明をタバサに丸投げ。
もっとも、その程度の内容。任務に関係しそうな情報は初めから頭に叩き込んで置け、と言う事を暗に言いたいのかも知れませんが。
ガリアの王太子妃と呼び掛けられたタバサから微妙な気が発せられる。喜怒哀楽で表現するのなら、これは明らかに喜び。
しかし、その感情を表情にも。まして、態度にも表せる事もなく、酷く淡々とした雰囲気で微かに首肯く彼女。
そうして、
「昔、この辺りに夜の翼と呼ばれる仮面の吸血鬼がいた。
その吸血鬼は四人の后を持ち、八人の従者を連れ、
夜な夜な生贄となる人間の血を啜り、
生きたまま引き裂き、
内蔵を貪り、
数多の魔獣を操って、
人々を恐怖の底に陥れていた。
その時、偶然、旅の途中にこの辺りに立ち寄ったイーヴァルディが、
人々の苦難を見かねて、夜の翼を退治する事を了承し、
これから八日間、家に籠もって隠れていなさい。
そう、人々に言い残して、イーヴァルディは、夜の翼の城……山の心臓と呼ばれる場所へと向かって行った。
イーヴァルディが山の心臓に向かって行った後、
地が震え、
天がうなり声を上げ、
そして、山が砕けた。
人々は不安な時を過ごし、
……イーヴァルディが言った八日後、突然、静寂が訪れた。
不安な思いで家から出た人々を待っていたのは、イーヴァルディの笑顔であった。
夜の翼は封じた。
彼はそう言って、人々に笑い掛けた。
封じた? 倒したのではないのでしょうか?
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