第5章 契約
第89話 吸血鬼伝説
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可能性もゼロでは有りません。
そんな人間の肉体を放って置いてくれるほど、世の中の悪意と言うのは甘いモノでは有りませんから……。
「常態的に彼女の肉体を維持出来るだけの霊気を送り込んで、彼女の魂魄を奪い去った吸魂鬼から彼女の魂魄を奪い返すまでの間の面倒を見てやって欲しいと言う事なのですか、風の精霊王」
☆★☆★☆
「ここが、最初と最後の被害者たちが発見された森の入り口ですか」
太陽はやや北向きに傾きながらも、未だその陽光を大地に降り注がせる午後二時過ぎ。但し、一年の内で一番日の短い冬至と言う日の所為か、その光は普段のそれよりもずっと弱々しく、冬枯れの森の奥深くに潜む夜と闇の子供たちの目覚めを感じさせる時刻。
時間的には未だ昼間と言う時間帯ながらも、ここは高い尾根に囲まれた山間部。日没までの時間は長く見積もっても三時間と言うぐらいですか。
出来る事ならば、陽の有る内に今回のルルド村の吸血鬼騒動に対して、ある程度の目処を付けたいトコロ、何ですけどねぇ。
そう考えながら、上空を見上げる俺。しかし、いくら上空を見上げたトコロで、進み行く時間を逆戻りさせる術などなく……。
あの後。ルイズの姉に当たるカトレアと言う女性の身柄を俺たち……いや、ガリア王国が預かると答えた後にルルド村の方々が用意してくれた昼食を……俺以外は文句を口にすることなく黙々と。そして、俺だけは顔で笑って、心で泣きながら無理矢理口の中に押し込み。
そうして、日が暮れる前に、現場を見る為にこの冬枯れの森の入り口に足を運んだのですが……。
尚、カトレアと言う女性が何故、風の精霊王の元を訪れたのかは不明です。
いや、訪れた理由は、吸魂鬼に襲われてすべての魂を奪われ尽くす前に魔法……。カトレアが行使出来たのか、それとも、白娘子の部分に残されていた微かな記憶に因り行使したのかは不明ですが、瞬間移動で風の精霊王の元まで逃げて来たのがすべてなのですが、その襲われた時の状況がはっきりしないと言う事です。
どうやら、前日。十二月の第四週、オセルの曜日の明け方に風の精霊王の元に逃げ延びて来たようなのですが……。
確かに、吸魂鬼も夜の闇に動く事の多い種族。まして、実体が薄い霊体のみの魔物の可能性が高い種族ですから、精霊を知覚出来ないこのハルケギニア世界の魔法使いに取っては対処出来ない魔物の可能性が高いでしょう。故に、彼女の中に微かに残って居た白娘子の残滓が因り能力の高い味方を求めて風の精霊王の元へ瞬間移動して来たのは理解出来る……。
……のですが。
まして、もう一人の関係者の俺は、昨日のその時間帯ならば、リュティスの宮殿内。つまり、強固な結界の内側に居たので、俺の元に瞬間移動して来る、と言う選択肢はなかったはずですから。
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