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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第89話 吸血鬼伝説
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め息にのみ止め、白猫姿の風の精霊王に対して答える俺。

「確かに、全体の流れから言うとそれであって居る」

 俺の答えを猫に相応しい哲学者然とした雰囲気で聞き、そう答えを返して来る風の精霊王。
 しかし、更に続けて、

「ただ、このルルドの村を襲って居る吸血鬼と、この娘。……白娘子(パイニャンニャン)と融合させられたこの娘とは、直接の関係はないと思うで」

 ……と、かなりのレベルの情報を伝えて来る。
 白娘子。確か、中国の四大民話伝説『白蛇伝』に登場するヒロイン。化名は白素貞(はくそてい)。一般には白娘々と呼称されることも多い。
 その正体は、四川省にある霊山の峨眉山清風洞(がびざんせいふうどう)に住む、霊力を持つようになった齢千年の白蛇の精。
 ただ、蛇の精と言うにはその性は陰のモノではなく、行った事は自らの夫の薬屋の手伝いを行い、流行り病に苦しむ民の為に薬……仙薬を処方したと言う事に成っていますから。

 仙人としては、俺の遠い先達と言うべき相手でも有りますか。

 しかし、人間と妖物の融合。
 俺は、その寝台の上で安らかな寝息を立てる女性を見つめながら、少し……いや、かなり暗澹たる気持ちに苛まれていた。
 いや、むしろこれは怒りと言うべきですか。

「風の精霊王。その人間と白蛇の精を融合させたのは誰なのです?」

 これは、かなりの外道な行いが為されたと考えても間違いではないでしょう。確かに、理論的には可能ですが、それが倫理的に認められるかと言うと……。
 おそらく、何らかの魔法の実験の結果。どうにも、複雑怪奇で、陰湿な事件に遭遇したと言う事ですか。
 例えば、初夏のベレイトの町。岩塩採掘用の坑道内で出会った、あのアマトと言う名前の人造人間を造り出した事件のような真似が……。

 しかし……。

「そんなモン、アンタに決まっているやろうが、ハク」

 俺のかなり強い陰の気を知ってか、知らずか。おそらく、そんな細かい事に頓着していない風の精霊王が、あっさりとそう答える。
 そうして、

「白娘子の真名を知って居るのは、お互いの真名を賭けて勝負し、その勝負に勝利したアンタだけ」

 いともあっさりとそう言葉を続ける風の精霊王。まるで答える事自体が面倒臭いと言わんばかりに、後ろ足で自らの右耳の後ろを掻きながら。

「それに、ちゃんと見てみぃ。白娘子の魄とこの娘の肉体は完全に同一化している。これは両者がこの術式に完全に同意した証。白娘子がここまでの義を示す相手は、自らの夫と、アンタ以外には居らん」

 自らが妖物と同一化する事に同意。そして、その外法を俺がやった?
 そんな事を言われても、この目の前の寝台の上で眠る女性に出会ったのは、今が初めての事なのですが……。
 そう
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