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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第89話 吸血鬼伝説
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る。

 それは当然――

「そうやな。そうやって、今までも乗り切って来た」

 彼女の想いと俺の思いはほぼ同種。但し、現われ方が違う。
 彼女は俺と共に死地に赴く事を望み、
 俺は彼女を――

「ただな。イーヴァルディだろうが、ケツアルカトルだろうが、そのどちらでもかめへんのやけど、伝承に残るぐらいの勇者なら、もう少し後に続く人間の事も考えてから仕事をして欲しかったな。そう思っただけなんや」

 ――後方の安全な場所に置いておきたかった。それが難しい事は判って居るけれども。
 そう考えながら、それでも軽い口調で言葉を続ける俺。
 彼女がそれを望まず、現実に彼女の手助けがなければ、俺一人で出来る事は高が知れて居ます。
 この仕事が失敗する事に因って起きる事態の大きさが想像出来る以上、今、彼女を俺の元から遠ざける事は百害あって一利なし、でしょう。

 もっとも、もしかすると伝承に残されている通り、何らかの方法で、その勇者様を召喚する事が出来るかも知れないのですが。

 しかし……。

「問題ない」

 僅かに……。普段通り、動かしたかどうか判らないレベルで首を左右に振った後、簡潔にそう答えるタバサ。
 まして、彼女の言葉は事実。そもそも、未来を諦める訳には行かないので、問題が有ったのなら、その問題点を……。

 何と言うか、少なくとも悪い方向に思考が向かう事だけは踏み止まった俺。
 そして、その俺を一度見つめてから、再びタバサが言葉を紡ぐ。

「イーヴァルディは所詮、昔話の登場人物。でも、わたしの正面には、現在進行形で英雄伝説を創りつつあるあなたが居る」

 夢の向こう側の世界からやって来たわたしの大切な人。それがあなた。
 最後をそう締め括り、再び、その視線の中心に俺を据えて、黙り込むタバサ。

 ……成るほど。

「確かに、ガリアが意図的に流した情報に因り、俺……。いや、ガリア王太子ルイの英雄伝説は創り上げられつつあるな」

 俺個人の意志に関係なく。
 但し、所詮俺は影武者。王太子ルイが玉座に就いた後に苦労するのはジョゼフ本人ですから、英雄王だろうが、勇者王だろうが、解放王だろうが、好きなように呼び名を付けて貰っても構わないですから、と考えて放置してあったのですが。

 ただ、故に……。

「現在進行形で有ろうとも英雄伝説は英雄伝説。言葉や思いに霊力が宿るのなら、影武者に過ぎなくても、今の俺には伝説上で語られている英雄の属性が与えられて居る可能性も有る、と言う事か」

 まして、身体にヘブライの神の子と同じ位置に聖痕を刻まれ、左目はアース神族の主神を模し、振るう剣はケルトの神々の王ヌアザの剣。
 俺が神話や伝承から受けて居る影響はイーヴァルディの比では有りませんか
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