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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第89話 吸血鬼伝説
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 魔法の明かりが唯一の光源として照らし出された空間。足元から這い上って来る冷たい空気に支配されたその部屋に眠るピンク色の髪の毛の少女。彼女に目覚めの気配はなし。規則正しく続く呼吸のみが、彼女が精緻な人形などではなく、現実に生きて居る人間だと言う証明と成って居る状態。
 尚、この部屋にまで案内をしてくれた村長さんには、昼食の分量を少しばかり増やして貰う為にこの場を去って貰い……。

「それで。この女性は一体、何モノなのです、風の精霊王」

 改めて白猫姿の風の精霊王に向き直り、そう尋ねる俺。但し、敢えて者ではなく、モノと言う呼び方で問い掛けた。

 白いシーツが妙に似合う……精気の塊のようなルイズとは違う、しかし、髪の毛の色や質。そして、その精巧な容貌から明らかに血縁関係を想像させる妙齢の美女。
 雰囲気としては深窓の令嬢。日本人が考える貴族の令嬢とはこう言う雰囲気の女性の事を言うのだろうと言う女性。
 その女性が何故、ガリアのガスコーニュ地方と言う田舎に居るのか。彼女の正体は。何故、眠り続けて居るのか。
 疑問は幾らでも涌いて来ますから。

 何故か、この女性を風の精霊王が護って居たのですから、彼女(風の精霊王)にその理由を聞けば、その辺りの事情を知る事が可能でしょう。
 それに、もしかするとこの女性や風の精霊王自身が、このルルド村に起きて居る吸血鬼事件とも何らかの繋がりが有る出来事の可能性も有りますし。

 村長さんが話してくれた、この女性が現われた時の経緯から推測するのならば。
 しかし……。

「何や、小僧。オマエ、そんな簡単な事もわからんのか。取り敢えず、その蒼い瞳がガラス玉よりも上等なモンなら、この女性が何モノかなんか直ぐに分かると思うけどな」

 自らはベッドの脇に置かれた椅子の上に座り、まるで猫の如く毛繕いを続けながら、そう答える風の精霊王。
 どうにもやる気を感じさせない雰囲気。確かに気ままな猫の姿。更に、風の精霊と言うのは総じて、こう言う気ままな性格。まして、伝承に語られている風の精霊王と言うのも、今の目の前の猫と同じように、気ままで気まぐれ。先ほどまで心地良い、爽やかな風を吹かせて居たと思ったら、一瞬にしてすべてを巻き上げる竜巻を発生させる。白き柔らかな雲がアッと言う間にどす黒く変質。大いなる神の怒りを体現する雷を降らす。

 何とも扱い難い精霊であるのは間違いないのですが……。

 ただ……。
 う〜む。今まで出会って来た精霊王たちは俺に対してかなり好意的だったけど、コイツはどうもそう言う訳ではないと言う事ですか。

 そう考えながら、瞳に能力を籠める俺。先ほどの風の精霊王の台詞から考えると、どうやら、この粗末な寝台の上で眠る若い女性は普通の人間ではない、と言う事なのでしょうから
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