高校2年
第四十三話 裏目
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第四十三話
焦る気持ち。勝ちたい、でもこのままじゃ勝てない、何とかしないと……
そんな精神状態と、スローボールの組み合わせは、それはそれは最悪である。
コキッ!
「ショート!」
ツーアウトから、宮園がムキになったフルスイングから糞のようなショートゴロを引っ掛ける。南学ショートの諸見里が軽快に捌き、7回表、三龍の攻撃も三者凡退。
「ええなぁーええなぁー!」
「翁長お前どげんしたんや急に!」
「覚醒やないか覚醒!」
南学サイドの雰囲気は非常に良い。
甲子園決定戦をリードしているという気負いもなく、守備を終えてベンチに戻るナインには笑顔も見える。
「まだまだチャンスあるけんな!ここ締めていくぞ!」
「「「オウ!!」」」
一方、守備に向かう三龍ナインは必死。
このまま終われない、終わってはいけない、そんな思いに、表情は自然と険しく、厳しくなる。
<三龍高校、シートの変更をお知らせします。ピッチャーの美濃部君に代わりまして、剣持君が入り、ライト。ライトの越戸君がピッチャー。3番ピッチャー越戸君、8番ライト剣持君、以上に代わります>
浅海は、球数が増えてきていた美濃部を遂に降板させた。リリーフにはライトのポジションから移った越戸が上がる。
(……わざわざ木凪からやって来たのに、木凪代表のチームには負けられんけん)
マウンドに上がった越戸は燃えていた。
木凪本島のボーイズで活躍し、地元の高校からの誘いもあったが、あえて都市圏・水面の三龍を選び、アニメグッズの供給源を確保……ではなく、自分を試しに島を出たのである(半分くらい嘘)。
木凪、それも離島の南学などには負けられない。
バシィ!
「ストライクアウト!」
「いぇぇえええええぁああ」
南学の下位打線に対して、サイドスローからの癖球で真っ向勝負。いつもより走りが良いストレートで攻撃的にインコースを突き、腰を引かせた。上げる奇声も普段より更にパワーアップし、柄にもなく派手にガッツポーズを決めてマウンドを降りる。
「越戸が三人でキッチリと切った。点差は一点。相手だって、早く逃げ切りたくて苦しいはずだ。ムキになって振り回すんじゃない。……もうそれしか言う事はない、いけ!」
「「「はい!」」」
攻撃前の円陣で浅海が訓示を述べ、三龍ナインが力強く頷く。回は8回の表、試合終了まであとアウトは六つ。
(しかし、結局翁長相手にヒットは一本だけ……配球に打ち取られてるならまだ対策を授けられるが、スピードの遅さそのものにやられている現状じゃ……どうしようもない。引きつけて打てと、当たり前の事を言い続けるしか……)
ナインを鼓舞する、浅海の胸の内も相当に苦しい。有効な策を与えたいが、走者も殆ど出ず、ただ凡打の山を
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ