高校2年
第四十三話 裏目
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ぁしゃーない。渡辺、譲ったるわ)
安曇野は9番打者らしく、三塁側にしっかりバントを転がした。知花が処理するが、三塁は見ず、一塁に送った。
一死三塁。勝ち越しのランナーが三塁に進み、打順は、州大会7打数6安打の
<1番セカンド渡辺君>
絶好調・渡辺に。しかも、気合い十分で、闘志に溢れている。
このピンチ、マウンドに南学の内野陣が集まった。
「敬遠か?」
捕手の柴引が尋ねると、知花はとぼけた顔でそっぽを向いた。
「まぁ普通は、こいつは敬遠やろな」
「普通じゃおもんないとか、言いたそうやな、お前」
「だってなぁ……」
知花が、ホームの方を見やると、知花を物凄い形相で睨みつけながらバットを振る渡辺が居た。
「敬遠とかしたら、俺、あいつに試合終わった後で刺されんか心配やわ」
「確かに」
南学ナインの間に、笑いが起きた。
「次ウチは1番からやし、一点くらい、やった所で打ち返したらええか」
「そうやなぁ。何だかんだここから上位やけ、満塁策でクリーンアップ勝負ちゅうのもなぁ」
「よし、勝負しよ勝負」
マウンドにできた円陣を、全員が拳を合わせて締めくくる。
「夢はひとつ」
「「「甲子園」」」
あえて、目の前に見えてきたゴールを口にして、南学ナインはポジションに戻って行った。
(キャッチャーが、座った?)
三龍ベンチでは、浅海が目を丸くした。
三龍打線で最も当たっている渡辺相手に、南学バッテリーは勝負の構えを見せていた。
ベンチの方を見ても、神谷監督が上機嫌にちょこんと座っているだけ。
(絶対に打っちゃるけん)
渡辺は顎をぐっと引き、ふーと息をついてマウンド上、知花に対する。
知花はセットポジションに入り、初球を投げ込んだ。渡辺は初球から積極果敢に振っていく。ボールはアウトコースにグン、と落ちた。
ブン!
「ストライク!」
空振り。少しよろける程の空振りを披露した渡辺は、ボールの軌道に目を見開いた。
(左で、外に落ちていったって事は……スクリューか!?)
腕の振りと球速とのギャップ、変化量………今まで見たことがない変化球に驚く。
(渡辺、ボールが見えてないな。牽制死が引っかかってるのか?確かに、取り返したい気持ちは分かるけど……)
ベンチでその空振りを見た浅海は、一つの考えに思い至った。
(ここは、スクイズもありか……)
マウンド上の知花は元々外野手。グラブトスなど、バント処理が上手いとは思えない。左利きなのでランナーを背中に見る形になり、スタートしてから外すような芸当も難しいだろう。
そして、渡辺はバントも上手だ。
(仕掛けるなら、大きな空振りで打ち気を見せた、ここしか無い!)
浅海はサイン
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