DAO:ジ・アリス・レプリカ〜神々の饗宴〜
第二十九話
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「さて、セモン。君はなぜここに来たのかな?」
「……決まってる。この世界の謎を解き明かして、さっさと《ジ・アリス・レプリカ》のテストを終わらせる。そして日本に帰るんだ」
突然の質問に、正直に答えるほかないセモン。その回答を聞いて、《主》は愉快そうに笑った。
「そうだね。その通りだね。じゃぁさ……その、『日本に帰る』意味がなくなっちゃったら、どうする?」
「――――何?」
その時だった。
「清文」
狂おしいほどの愛おしさがこみあげてくる。懐かしい、死ぬほど聞きたかった優しい声が聞こえてきた。幻聴なのか。それは、セモンが聞き間違えただけなのではないか――――
だが、その声の持ち主は、振り向いたセモンの視線の先に、確かに存在した。記憶にあるとおりのあの金色がかった茶髪と、オレンジ色の目で、セモンを見つめていた。唯一記憶にあるのと異なるのは、見覚えのない蒼いマフラーを巻いていることか。
「――――コハク……琥珀」
コハク―――杉浦琥珀が、たしかにそこにいた。
「清文……馬鹿っ!!探したのよ!」
「琥珀……琥珀なのか?本物?本物の?」
「当たり前じゃない!そうじゃなかったらなんだっていうのよ……」
「本当に本物か?俺の好物は?」
「メロンパン」
「俺の部屋にあるベッドの下には?」
「中学の時に図書室から借りっぱなしになったまま返せなくなった小説が二冊」
「お前の弟の名前は?」
「杉浦翔太。中学一年生。ゲーマー。SAOは対象年齢外だったから未プレイ」
「お前の3Sは?上から順番に」
「う……は、80/60/81よ!はずかしいこと言わせないで!」
ここまで確認すればほぼ完了といっていいだろう。琥珀のスリーサイズは知っているのは本人とセモンだけである。何でセモンが知っているのか?……身体測定の結果覗いたからだよ。その時は殴られた。
だが今は、いくら抱きしめてもコハクはセモンを殴らない。暖かく、その背を包むだけだ。
「本物の……本物の琥珀なんだな……」
「だから言ってるじゃないの」
もう離さない。絶対に。二度と離してなるものか。今度こそ、この約束はぜったに守る。
「清文――――ここに居よ。ずっと、二人で」
「それでも――――それでも、いいかもしれないな……」
いつしか、セモンの意識は、白い安寧の中に溶け込み始めていた。暖かい安寧の中から、動き出すのはとても心苦しかった。もうこのまま、溶けて消えてしまいたい――――
「……ああ。ここに、いるよ」
契約は、成った。
セモンの意識が掻き消える。白亜の宮殿の神王は、冷たく笑う。その場に倒れ込んだセモンと、蒼いマフラーを巻いた、|白《
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