アリシゼーション編
序章?彼の世界で待つ者
白亜の塔にある者達
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務方幹部陣や司祭、さらにその上は整合騎士のみが入る事を許される聖域と言っても良い空間だが、彼女はとある人物の計らいーーーというか暇潰しがために特例でそのエリアへの立ち入りを許可されていた。
廊下を行き交う文官の高官達は修道女見習いの服を見つけるとギョッとしたような顔をするが、それがアリスだと分かると一様に納得した顔になる。とは言え、じろじろ見られるのはあまりいい気分がしないので俯き加減に目的の部屋に到達し、ノック無しで入室する。ちなみにカセドラル内部の無数の部屋においてこの部屋が唯一ノック無しで入れる部屋だったりする。
その部屋の中は無数の本と羊皮紙で満たされていた。
「お、来たか」
「……先生、何度も申し上げていますが、少しは部屋を整頓なさって下さい。たった3日で前回より部屋の惨状が酷くなっているように思えますが?」
「気のせい気のせい」
先生と呼ばれた男は椅子から立ち上がると腕をヒョイと振った。すると、部屋中に散らばった羊皮紙が彼の手元に集まってくる。何度かそれを繰り返し、部屋の奥の事務机の上に何束かに分けて積み上げるとそれを整理し始めた。
「……整合騎士の秘技たる《心意の腕》もそれでは形無しですね」
奇跡の御技と言っても過言ではなく、身につけるには相当の努力を必要とする整合騎士の秘技をあっさりと、このような下らない事に使用する自らの師に嫌味を垂れると、当の本人は当たり前の事のようにしれっと言い放った。
「使えるものは使うべきだ。アリスちゃん、君がそうだろう?」
「私は別に、教会を利用している訳では……」
「そうかい?」
事実、いくら力を付けたところで自分が故郷に帰れる訳でも無く、ましてや教会の支配を脱する事など出来はしない。
一年前、アリスがこの教会にやって来たその日に出会ったこの《教会付き剣術指南役》兼《歴史学者》に付いているのは単純に接し易さと何よりその優秀さからだ。
整理整頓の能力を除けばこの男はすこぶる優秀である。
教会を守る衛兵達の訓練だけで無く、一騎当千の武力を誇る人界最強の《整合騎士》達の訓練にも携わる程の強者。本人から整合騎士達の話を聞くことは無いが、風の噂ではその剣力は騎士団で《最強》と言われる騎士団長に匹敵すると言われている。
一方、学者としての能力も並では無く、過去に纏められた散逸な史料を取り扱い、新しく編纂しているらしい。らしい、というのは部屋に散らばっている史料から推測したものであり、具体的に研究内容を伝えられた事は無いからだ。
そう考えると私は先生の事を思った程知らないのかもしれない。
あらかた部屋が片付いて来ると、書物の収納場所はもうなくなってしまった。元々の収納容量と内部にある書物の量が違うため仕方の無い事だが、果たしてここにある資
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